看護管理者同士のピアサポートが力をくれる
◇熊谷雅美(済生会横浜市東部病院 院長補佐)


●悩みながらの意思決定
 新型コロナウイルス感染症の最前線で、2年以上の長期間にわたって看護を担っていただいている現場の看護管理者と看護職に心からの感謝を申し上げます。
 この感染症の正体、治療法、予防のワクチン開発まで、長い時間がかかりました。しかし変異を繰り返すウイルスで、現在は第7波の蔓延状況となっています。7波目になって、政府は「withコロナ」で経済活動を止めることなく感染対策を万全に行うという方針に舵を切りました。しかし医療の現場の過酷さは何も変わりません。むしろ世界で最多の感染者数を毎日更新していきました。
 看護管理者はいかなる困難な状況においても、患者・家族、そして看護スタッフの安全を保障する役割を担っています。この数年、看護管理者の皆さんは、「これでいいのか? これでよかったのか?」と悩みながらも意思決定をし、前に進んできました。これらの困難や課題を解決する経験は、看護管理者のゆるぎない看護管理観を形成していきます。人は経験から学び、次の困難に立ち向かう力量と勇気を獲得します。

●新病院立ち上げの苦悩
 私は約20年前、新しい病院を創るという機会をいただきました。「21世紀の病院はこうあってほしい。22世紀につながるような病院を創りたい」という思いで、心を同じくする仲間と取り組みました。しかしたくさんの困難が待ち受けていました。
 いわれのない誹謗中傷には心が萎えそうになりました。経営が安定するまでは赤字経営であり、職員の給与の支払いを心配する日々もありました。組織は脆弱であり、入職してもすぐに離職してしまい、指導にあたるリーダー層は「自分の指導が悪いのではないか」と悩み、前に進めなくなることもありました。その時は「すべてが負のスパイラル」に陥ったように感じられました。
 「もうだめ」と弱音を吐きそうになることもありました。しかし院内で懸命に頑張っている看護スタッフ、他の職員の笑顔を見るたびに、院長が職員に宛てたメッセージを思い起こし、「きっと明日は晴れるから」と独り言を言いながら自分を奮起させていました。
 たくさんの方々に助けていただきました。中でも済生会の看護部長の皆さんからの支えは、大きな力をくれました。その時よく皆で歌ったのが中島みゆきの「時代」でした。歌詞を思い起こすと、今でもジーンときます。

●看護管理者がつながろう
 ようやく一人で立っていられる病院になったのは、開院から4年目の頃でした。それからも困難はこれでもかとやってきましたが、どんな困難も「大丈夫。乗り越えられない困難なんてない」と不思議な確信を持つことができました。
 看護管理者は孤独だと言われることもあります。しかし、まわりには心を同じくする仲間がたくさんいます。一緒に悩み、笑い、涙してくれる仲間がいます。一人で悩まずに言葉にしてみると、解決の糸口が見えてきます。
 私にとって、看護管理者同士のピアサポートは、前に進むためのエネルギーです。それは看護管理者を卒業した今でも、つながっています。そのことに心から感謝しています。

熊谷 雅美

済生会横浜市東部病院
院長補佐

▼出典元 メディカファン2022年10月 あなたへのエール
~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~
看護管理者同士のピアサポートが力をくれる
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