いまこそあなた自身のwell-beingと向き合おう!
◇松浦 正子(大阪信愛学院大学 看護学部教授)

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●再び感染拡大の不安のなかで
 新型コロナウイルス感染症が令和5年5月8日から5類感染症に移行したことに伴い、社会活動も徐々に活発化してきました。8月に東京で開催された「日本看護管理学会学術集会」には、これまで以上に多くの看護管理者が参加し、私も全国の仲間と久しぶりの再会を喜びました。
 街に一歩出るとマスクを外している人が増え、まるで感染症は終息したと錯覚するほどです。しかしその一方で、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対応の教訓をふまえ、今後の新興感染症の発生・蔓延に備えて、第8次医療計画の中に、6事業目として「新興感染症対策」を位置づけるなど、感染症への対応は看護管理者にとって避けられない課題となっています。
 再び感染拡大の波が押し寄せるかもしれないという不安を抱きながら、医療の現場で看護管理者として新型コロナウイルスと向き合いながら、あなた自身のwell-being(ウェルビーイング)とも向き合ってみませんか。

●リデンプションの力
 心理学用語に「redemption(リデンプション)」があります。もともとはキリスト教用語で、宗教的な「罪のあがない」という意味があるのですが、日本の心理学では「超回復」という翻訳が用いられています。その意味は、「人は精神的に落ち込むことがあっても、そこから立ち直ろうとする時、元の状況に戻るだけでなく、元よりも高い境地に戻る力がある」というものです。
 リデンプションに関して、私は平成7年に体験した阪神淡路大震災を思い出します。震災によって市民は心理的にも物理的にも大きなダメージを受けましたが、さまざまな困難を一つひとつ乗り越え、街は元の状況以上に復興しました。
 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、混乱してしまった看護提供体制の立て直しに日々奮闘しているあなたにも、強いリデンプションの力が備わっています。あなたのリデンプションの力に支えられて働く部下は、危機に直面してもそれを乗り越える勇気と行動を身につけるに違いありません。

●Well-beingと趣味
「高い夢を持ち、永遠の楽観主義でそれを追及しよう」。
 2010年にノーベル化学賞を受賞した故根岸英一氏からのメッセージです。自分ではコントロールできない状況下ではどうしても悲観的に考えがちですが、大きな目標を持っていれば、多少の失敗も「ドンマイ!」と思えるそうです。高い志を持ち、それを成し遂げた人ならではのことばです。メッセージはさらに続きます。「幸せの要素としては、健康、家族、仕事があげられる。そして4番目には趣味がある。仕事がしんどい時、いい趣味を持っているのは大切」だと言っています。
 とかく看護管理者はワーカホリックになりがちですが、コロナ禍の今だからこそ、仕事がしんどい時、自分らしさを取り戻すことのできる趣味をどれくらい持つことができるかが、あなたのwell-beingを維持するうえでの鍵となるのではないでしょうか。

●困難に直面した時のおまじない
 とりわけコロナ禍においては、自分の思い通りに物ごとが進むことは少ないと思います。さまざまな管理的場面で、深い谷底に落ちて這い上がれなかったり、迷路に迷い込んだりすることもあると思います。そんな時にはたいてい「いっそのことギブアップしてしまえ、楽になるぞ」と悪魔のささやきが聞こえてくるのです。
 私にはそのような時、自分にかけるおまじないがあります。
「この困難を乗り越えた先に待っている私は、誇り高く、自信に満ちていて、キラキラ輝いているに違いない、そんな自分にきっと会える!」
 このおまじないをかけると、自己効力感が高まり、どのような難題も「やれる!」という自信が芽生えてくるのです。どん底に陥っている自分を否定せず、むしろそんな自分も愛おしいと思う。ピンチをチャンスに転換するということはそういうことではないでしょうか。

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 医療現場の最前線で、看護管理者として未だに終息しない新型コロナウイルスと向き合っているあなたに、畏敬の念を込めて心からのエールを送ります。

2023年11月1日 無料ウェビナー
『2世代』の元看護部長が語る!“キラリと光る”次世代管理者を見つけ、育てよう

松浦 正子

大阪信愛学院大学 看護学部教授

▼出典元 メディカファン2023年10月 あなたへのエール
~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~
いまこそあなた自身のwell-beingと向き合おう!
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