管理者によるマネジメントはどう変わるか

看護管理者である皆さんの視点から、最近の若手はどのように見えているでしょうか。
もしかしたら「成長意欲が低い」とか「権利ばかり主張する」といった否定的な意見があるかもしれません。
また、「性根を叩き直してやる!」といった過激な声も聞こえそうです。
しかし多様な働き方を受け入れる必要がある現代では、考え方を改める必要があるのは、実は上司の側かもしれません。

医療分野に限らず、これまでの日本企業では、現場で結果を出した人が管理職になる傾向がありました。
しかし結果を出せる人とは、能力が高く、意欲もあり、運もよいというケースが多いわけです。
そしてそのような人が上司になると「自分のように頑張れ」と部下に言いたくなります。 

これは皆が当然のように昇進を目指して競争している環境ならば成立した育て方です。
しかし今は違います。
限られた時間でしか働けない人や管理職になることを希望しない人も多いのです。
そのため、働き方に制約がある人に対してうまく仕事を割り振る、また多様な働き方をする人を適正に評価するといった、以前ならば必要なかったタイプの仕事が管理職に求められています。
このような背景から管理職にふさわしい人物像も変化します。
たとえば、天才肌の人よりも、仕事を苦労して覚えた人のほうが、部下を育てるという意味では適切かもしれないのです。 

もちろん現場で結果を出してきた人が管理職になれないわけではありません。
看護師の皆さんは、患者に対して共感力を持ち、丁寧に話しかけることにも高い専門性を持っていると思われます。
それを若手や、プラチナナースなど働き方について多様な希望を持つ人に対しても発揮できればよいのです。 

2024年の春、人手不足対策として、賃上げなどの金銭面での対応が充実してきました。
しかし人は働く場所をお金だけでは選びません。
働きやすい環境や納得感のある労働条件を提示することで、人員を確保し、医療の現場をより良いものにしていきましょう。

安藤至大(あんどう・むねとも)
日本大学経済学部教授。1976年東京生まれ。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授などを経て、2018年より現職。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。

 出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2024月6号
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