キャリアを重ねていく過程で仕事に対するマンネリ化が起こり、「何のために働いているのか?」「私が目指していたことは何だったのか?」などと考え、頑張れないときがあります。
意欲的に仕事をすることが望ましいといえども、いつもそれができるわけではありません。
また、「何のために働いているのか?」の問いは、自分のキャリアの再評価を求めていることでもあるので、それに対する答えは容易に出すことはできません。
そのようなときは、意欲を持てずとも、答え探しは後回しにして、日々の仕事を丁寧に行うことが大事です。
ただ忘れてはいけないことは、「誰のための仕事か」というと、キャリアの視点では「自分のため」であることです。
キャリアの語源は「轍(わだち)」です。
その語源に基づくとキャリアとは自分自身が歩いてきた足跡になります。
ではキャリアの轍はどこに作られるでしょうか。
それは“振り返った後ろ”です。
キャリアというと未来の展望が関係していることが多いので、先のことばかりを考えがちです。
しかし、誰もがいつも明確な将来が見えていて、そこを目指して歩いているとは限りません。
むしろ先が見えない、言わば霧がかかった状態の中、何か悶々(もんもん)としながら“キャリアミスト”の中を歩いていることが多かったりします。
よいキャリアを積み重ねるためには、キャリアが不安定で悶々とした気持ちがあったとしても、それは後から考えることとして、日々の仕事を丁寧に行い、自分の足元をしっかりと見て歩くことが大事です。
また仕事を頑張れないときには、くよくよすることもあります。
「くよくよする」とは、いくら考えたところで解決しようのないことをいつまでも気にするさまを表す語です。
くよくよ・悶々など、困難に直面したときに湧いてくる情は、自身の中に「後で考える箱」を作り、そこにしまって後で考えることにすると、頑張れないときの自分を助けてくれます。
頑張れないときは必ずあります。
そういうときは「後で考える箱」を上手に使い、日々の仕事を丁寧に行うことを心掛けてみましょう。

原 玲子(はら・れいこ)
日本赤十字秋田看護大学学長。仙台赤十字病院で手術室、外科病棟、外来の看護師長、教育担当看護副部長を経験後、日本赤十字社幹部看護師研修センター教務部長として認定看護管理者教育に携わる。専門は看護管理学。
出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2024月8号
