自己決定の原則

第7回 自己決定の原則(バイスティックの7原則)

クライアント本位の法則

自己決定の原則とは、「みずからの行動を決定するのはクライアント自身である」という考え方のことです。
看護職・介護職のみなさんには、今さら言うまでもありませんが、例えば、医療や介護のサービスを受ける際に、どのようなサービスを利用するのかはクライアント(利用者)自身の選択を尊重しなければならないという考え方です。

医療においては、治療の方針を示すのは医師ですが、介護保険ではクライアント(利用者)本位が基本です。
利用する介護サービスの種類や提供事業者を決める権限は利用者自身にあることが、法的にも明確に位置づけられています。

しかし、利用者やその家族だけでサービスの内容を理解するのはとても困難です。
そのため、ケアマネジャーが利用者や家族の意向を十分に把握したうえで、専門的見地から支援の方向性を策定し、サービスの内容をていねいに説明して同意を得たうえで、ケアプランを作成することになっています。

自己決定できるよう的確な情報を提供する

一方、医療においてもインフォームドコンセントの考え方に基づいて、患者さんの自己決定権や知る権利、自律の原則を尊重したサービスが提供されています。
しかし、実際には患者さんや利用者、その家族が医療者や介護職から説明された内容を十分に理解できない、あるいは納得できないなどの声も少なくありません。

このような状況で、看護師やMSW、ケアマネジャーなどの援助者が果たすべき役割は、患者さんや利用者、その家族が今後受けたい治療やケアの内容を、患者さんや利用者自身で選択できるよう、必要な情報を的確に提供することです。

何度揺れても繰り返せるACPへの支援も

ただし、患者さんや利用者、家族の望むままにサービスを提供するだけでは、本人が本当に望む生活を実現することはできません。
必要に応じてサービスの受け手である患者さんや利用者、家族の要望と、サービスの提供者である医療者・介護職の双方が納得した意思決定ができるように、積極的なはたらきかけが求められているのです。

地域包括ケアシステムの構築が求められる今日、医療者と介護職の連携がよりいっそう重要となっています。
とりわけ、人生の最終段階におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)については、本人自身が家族や医療・ケアチームと話し合うことが重要であり、そのプロセスは一度決めたらそのまま決定するのではなく、何度もくり返し行うことが大切です。

人生の最終段階を簡単に決定できるはずがありません。
何度「揺れても」「くり返しの話し合い」を最優先できる支援を心がけたいですね。

初出:「透析ケア」2022年28巻7号より一部改変

白木裕子(しらき・ひろこ)
株式会社フジケア取締役社長
看護師、認定ケアマネジャー
日本ケアマネジメント学会副理事長

次回は「秘密保持の原則」についてお話しします。


第6回 非審判的態度の原則

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