7原則を踏まえた支援

第10回 7原則を踏まえた支援(バイスティックの7原則)

能力を最大限に引き出すための支援

医療や介護の現場では、従事者同士の双方向の関係性において、それぞれがもっている能力を最大限に活かしていくことが重要です。
また、熟練者には、技術的にも心理的にも経験の浅い人への支援が求められています。

現場の熟練者がスーパーバイザー(指導・監督を行う人)としてスーパービジョン(スーパーバイザーとスーパーバイジー〈指導・監督を受ける人〉との関係における対人援助法)を効果的に実施するためには、スーパーバイジーに対してバイスティックの7原則の基本的態度を踏まえた支援を実行していくことが重要です。

バイスティックの7原則の基本的態度

● 個別化

スーパーバイジーの理解度や技術力などを総合的にアセスメントし、力量に合った担当のふり分けやアドバイスを行うことで、能力を最大限に発揮させることが可能となります。
これらを総合的に考えながらアドバイスをしていかなければ、能力を最大限に発揮させることはむずかしくなります。

● 意図的な感情表出と共感

スーパーバイジーの失敗や悩みに敏感に反応し、気持ちを理解していることを意図的に表現します。
そして、スーパーバイジーも感情表出を行ってもよいと感じてもらうための雰囲気づくりが重要です。

クライアント(利用者)や家族、ほかの専門職、自分自身に対して、感じている感情を言葉にしてほかの人に語ることは、スーパーバイジーがそのケースとしっかり向き合っていくうえで重要です。
もやもやした気持ちを言葉にして、信頼できる人に聞いてもらうことで、すっきりする場合もあると思います。
このような取り組みを行うことで、スーパーバイザーとスーパーバイジーの信頼関係の構築がはじまるのです。

● 統制された情緒的関与

スーパーバイザーはスーパーバイジーが語ったこと(行った支援やそれにまつわる感情など)に対してさまざまなことを感じ、考えますが、そこで生起する感情や思考に引きずられると、スーパーバイザーとして適切な対応ができなくなることがあります。

スーパーバイジーの言動や態度に苛立ちを感じて、感情的な叱責や警告などを行うことは、短期的な変化しかもたらさず長期的にはマイナス効果となることが多いのです。
そのため、スーパーバイザーはスーパーバイジーの態度、考え方、失敗、状況などについて、自分の感情をコントロールしながらスーパービジョンを行っていく必要があります。

初出:「透析ケア」2022年28巻8号より一部改変

白木裕子(しらき・ひろこ)
株式会社フジケア取締役社長
看護師、認定ケアマネジャー
日本ケアマネジメント学会副理事長

次回は「スーパービジョンを効果的に実施するための姿勢」についてお話しします。


第9回 人材育成への活用

Scroll to Top