人生100年時代のキャリア
少子社会による労働人口の減少と人生100年時代の到来で、1億総活躍社会を目指し、国民総動員で「働き方改革」に取り組んでいる昨今です。
国の対策として、①未就労者の就労促進、②就労契約の無期化・処遇向上化(同一労働同一賃金)、③高年齢者の雇用促進(65歳までの雇用継続義務、70歳までの雇用継続努力義務)、④傷病者の就労両立支援(がん治療との両立支援など)、⑤外国人活用(技能実習生・EPA等)があります。
企業においては、人材育成の目標が、困難な状況でも企業が雇用を守った時代から、自分で生きられる能力を育てる、キャリアを自分で選択し積んでいく時代へと大きく変わりました。
つまり、これからは「キャリアを自分で積む社会」「転職による『トランジション』が当たり前の職業人生」となることを意味しています。
看護においても同様の状況が起こってきます。少子化で新卒の新人採用は難しくなり、既卒の転職看護師の採用が多くなっていくと予測されます。さらには看護師から違う職業にキャリアチェンジをする看護師も増えていくかもしれません。
このような変化の中、看護管理者の皆さんは、キャリアとは何かを考えることが、いま以上に必要になってきます。
キャリアを考える一つの手がかりとして、教育心理学者であるジョン・D・クランボルツの「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」1)をご紹介します。
クランボルツは、ビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるもので、予期せぬ出来事がキャリアを左右すると述べています。
そして「何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える 」、そのためにも、常に次の5つのスキルが重要だと述べています。
・好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持ち続ける
・持続性(Persistence):失敗してもあきらめずに努力する
・楽観性(Optimism):何事もポジティブに考える
・柔軟性(Flexibility):こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる
・冒険心(Risk Taking):結果がわからなくても挑戦する
看護管理者の皆さんは、今後どんなキャリアを積んでいきますか?
決して、いまの役割で終わりではない時代です。自分のキャリアを大切につなげていきましょう。未来にワクワクしながら「好奇心・持続性・柔軟性・冒険心」を持って、今日もお仕事、頑張っていきましょう!
引用・参考文献
1)ジョン・D・クランボルツ.その幸運は偶然ではないんです!.東京,ダイヤモンド社, 2005,229p.
熊谷雅美(くまがい・まさみ)
康心会汐見台病院看護部長/湘南医療大学臨床教授
済生会横浜市東部病院特任院長補佐済生会神奈川県病院、神奈川県立看護専門学校、神奈川県衛生部医療整備課看護指導班、神奈川県立看護教育大学校看護教員養成課程、済生会神奈川県病院看護部長、済生会横浜市東部病院看護部長、同院副院長兼看護部長、日本看護協会常任理事、済生会横浜市東部病院特任院長補佐を経て現職。横浜国立大学大学院教育学研究科学校教育臨床修了(教育学修士)、東京医療保健大学大学院医療保健学研究科修了(看護マネジメント学修士)、認定看護管理者、キャリアコンサルタント。
出典元:▼看護部の「人と経営」を学び、考えるオンラインサロン「看護トップリーダーサロン」 *熊谷正美先生が講師の「人材育成を学ぶコース」(11月開講:2023年2期)はこちら