BSC活用の具体的場面

第8回 BSC活用の具体的場面(成果を上げるBSC活用術)

今回から、BSCの具体的な活用場面を知り、具体的に活用しやすいツールとしてイメージできるようにしていきましょう。
ちなみにBSCはどんな組織でも、個人単位でも活用することが可能です。
基本的な考え方さえ押さえておけば、さまざまな種類の目標を管理する仕組みとしても使い勝手のよいツールです。
ここでは【病院全体の戦略設定】【看護部門の戦略設定】【病棟の戦略設定】【一人ひとりの目標設定】と4つに分けて学んでいきます。
今回は【病院全体の戦略設定】について解説します。

病院全体で戦略を設定する場合のBSC

病院という大きな組織、もっというと法人として戦略を設定する場合というのは、現実的には経営幹部で作成されることが多いと想像します。
そのため看護部のみなさまは、経営会議の場で説明されるビジョンや戦略を正しく理解するように話を聞くことが大切です。

BSCの活用目的を確認しよう

まずはBSCの活用目的を確認しましょう。
BSCはビジョンに向かうためという前向きな活用の意味合いもありますが、組織に課題があるため、その問題解決のためのツールとして取り入れる例も多くあります。
BSCの活用の意味合いがどこにあるのか、耳を傾けることによって、組織が目指す改善の方向性へ足並みを揃えましょう。

組織のビジョンとBSC設定期間までの目標を理解しよう

次にビジョンとBSCの設定期間の目標について、言葉を聞くだけではなく、その言葉の意味を理解するように努めましょう。
同じような言葉を用いていたとしても、人によりその受け取り方は異なるものです。
例えば、「地域の専門病院として確固たる地位を築く」というような文言があったとします。
では、「地域」とは、どこまでの範囲の場所を指すのでしょうか? 
ある専門病院は日本全国から患者が集まってくるという特性があり、また他の専門病院は同じ領域を専門とする病院が近所にあるという特性があるといったように、性格はさまざまです。

つまり、それぞれの病院がイメージする地域の前提条件は異なるわけです。
このように同じ言葉を用いても経営層(BSCの設定者)が考えている言葉と意味合いが異なるケースがあるので、「きっと自分が考えているとおりだろう」と独り合点せず、確実に言葉の意味を理解することをお勧めします。

改善に向けた道筋を理解しよう

そして、改善に向けた優先順位がどのようになっているかを把握しましょう。
複数ある課題のうちすべてが平等に解決できれば、それに越したことはありませんが、忙しい業務の中では、優先順位をつけて改善を行っていったほうが、効率的に組織改善が可能になることは言うまでもありません。
どのようなBSCシートを活用されているかにもよりますが、優先順位の高い改善内容が、より上位に書かれていることが普通でしょう。
戦略マップが丁寧に説明される場合には、その説明の順番に耳を傾けましょう。
どのような順番で改善に向けた行動を取ればよいのか分かるはずです。

自部署に求められている役割を把握しよう

最後には、各部署の所属長に向けて説明がされると思うので、それぞれの部署に求められる改善に向けた役割を理解するようにしましょう。
改善を担う一員であるという当事者意識を確実に持てるように、どのような役割を求められているか理解し、スタッフにそれを説明できるようにしましょう。

分からなかったら質問しよう

そして、あえて書くべきことでもないかもしれませんが、ご自身が分からないと思ったことは、勇気を持って質問してください。
経営幹部の説明する言葉に聞きなれない表現がある場合も少なくないと思います。
質問は恥ずかしいことではなく、管理職であるみなさまが理解されていないとスタッフに伝達することは困難です。
尋ねにくい雰囲気があれば、経営会議の場ではなく、終了後にこっそりと質問してもよいと思います。
よりよい経営改善という目的意識を持って、改善に向けた準備を行いましょう。

次回「看護部門で戦略を設定する場合のBSC」は1月上旬配信予定です。

初出:「ナーシングビジネス2023年秋季増刊」より一部改変


第7回 基本から学ぶBSCの活用方法

上村 久子
株式会社メディフローラ代表取締役
看護師・保健師・心理相談員

東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許取得後、看護師実務の傍ら慶應義塾大学大学院にて企業人事・組織論を勉強。大学院卒業後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象とした経営改善に従事。 現在は病院経営アドバイザーとして、医療機関所有データ(看護必要度データ、DPC データ等)を用いた病院経営に関するアドバイスやデータ分析研修会、診療報酬勉強会、組織活性化研修等の人材育成の研修・教育サービスを提供中。
専門は、院内データを活用した病院経営、看護マネジメント、人材育成。自らの臨床経験とデータ分析能力を活かし、大学病院からケアミックス病院まで病院規模や病院機能を問わず幅広く活動している。


ナーシングビジネス2023年秋季増刊
看護管理者のためのBSC(バランス・スコアカード)活用術
見よう見まね・我流から脱却する!

上村 久子 編著
メディカ出版 2023年11月刊行
B5判 156頁 3,080円(税込)
ISBN: 978-4-8404-8085-7

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