「時代(じだい)流」の 人を動かすマネジメント

 今回よりマネジメントについて語っていきたいと思います。まずは私自身のことについて話していきましょう。
 私が看護師になったきっかけは、馬車を引いていた老人が前輪に巻き込まれ、頭皮が引き裂かれたのを目撃したとき、帰省していた姉が、自宅にあったクレゾール液で負傷部位をぬぐい、タオルで素早く圧迫し、峠を越えてくる町医者を待っていた場面にあります。到着した医師が姉を褒め、老人は姉の素早い処置で一命をとりとめたのです。幼い私は「姉はすごい」と思い、看護師や医師は天職と感じるようになりました。
 しかし小6 のときに五島列島を襲った台風で自宅が流され、わが家の生活は一変し、7 人きょうだいの5 番目の私は医師になる夢をあきらめました。この状況の中でも常に明るく振舞う母親の姿は家庭の光でした。明治生まれの父をしっかり支え、子どもたちを褒めて育て、面倒見がよく、婦人会長でもありました。父親は戦争体験があり、夕食時に週1 回は戦争の体験を話してくれました。またユーモアがあり、私が中学に入学したときに「英語を教えてやるよ」と私をそばに呼び、「雨はピシャピシャ、雪はコンコンだよ」と言いました。信じた私は英語の授業でその父の“教え”を発表し、担当教師が転げ回ったことは忘れられません。時代(じだい)という名前にもエピソードがあります。私は歴史が好きではなく、教師の「○○時代」の声に「ハイ」と立ち上あがったこともしばしば。「居眠りしていたな、桃山時代だ」などと叱られたものです。私の性格はこの家庭環境で築き上げられました。
 そして現在、地方独立行政法人桑名市総合医療センターの顧問として医療・看護に携わっています。人それぞれがよいところがあり、誰一人として不要な人はいません。その人のよさを見つけ、活かすことを常に考えています。私は医療現場では救急医療を主に経験し、助産師資格を持つ管理者として「現場で、現物を観察し、現場を認識する」三現主義を貫いています。今でも「時代さんはマグロ」と言われるほど、よく動き回っています。現場には解決するヒントが山ほどあります。現場からの学びは自己成長につながるのです。

野中時代(のなか・じだい)
地方独立行政法人桑名市総合医療センター 顧問。看護師・助産師。
認定看護管理者。稲沢市民病院、常滑市民病院、名鉄病院にて看護
部長。桑名市総合医療センター理事長兼看護部長を経て現職。日本
福祉大学大学院福祉学研究科福祉マネジメント専攻修士課程修了。
滋慶医療科学大学大学院医療管理学研究科医療安全管理学専攻修士
課程修了。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2022月7号
https://store.medica.co.jp/item/130212207
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html
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