看護DX(デジタル変革)で看護師の給与が上がる可能性

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

看護職とデジタル変革(DX)

在宅医療・介護領域におけるデジタル変革(以下、DX)は、今日の医療業界において急速に重要性を増しています。
とくに訪問看護ステーションの効率化は、患者への質の高いサービス提供と、看護職員の働きやすい環境を両立させるためには不可欠です。

看護職者の給与向上の可能性

訪問スケジュールの自動作成を通じて看護業務のデジタル化を推進している株式会社ゼストは、2023年1月31日、ホワイトペーパーを公開しました1)
公開されたホワイトペーパーは、看護DXにおける革新的な取り組みを示す貴重な資料です。同ホワイトペーパーは、従来のものとは一線を画し、看護職者の給与向上の可能性を示唆する内容が特徴です()。
これは、看護DXの取り組みが単に業務効率化や残業時間の削減に寄与するだけではなく、看護職者の給与増加にもつながる可能性があることを初めて提示したものといえるでしょう。

図 経済効果の試算(文献1より引用)

従来、看護業界におけるデジタル化の議論は、効率化や残業代などのコスト削減が中心であり、個々の看護師の給与の向上にはあまり焦点が当てられていませんでした。
しかし、同ホワイトペーパーは、月額約69,000円の給与上昇が可能であると示し、さらには事業所の利益向上にも寄与することを明らかにしました。
これは、業務の効率化が看護師の給与増加に直接的につながるという、従来の考え方とは異なる視点を提供しています。

同ホワイトペーパーの発表は、看護DXにおける新たな価値創出の可能性を示唆しており、看護管理者や看護師にとって注目すべき情報です。
個人の看護師が直面する経済的な課題に対する解決策として、また、看護サービスの質を向上させるためのデジタル技術の活用として、同社の取り組みは大きな意義を持っています。

看護管理者として持つべき視点

デジタル技術の導入による看護職の給与増加の可能性は、看護管理者にとって注目すべき情報であり、その重要性は計り知れません。
この発見は、看護職における給与体系の見直しと、労働環境の改善に向けた大きな一歩を示しています。
看護管理者としては、このような業界の変革をリードする“ニュースのツボ”を正確に把握し、積極的に取り入れていくことが求められます。

看護職員の賃金アップは、岸田首相が記者会見で触れるほど、国家レベルでの重要課題となっています。
これは、医療現場で働く看護職員の待遇改善が、質の高い医療サービスの提供や、医療業界全体の持続可能性に不可欠であることを意味しています。
同ホワイトペーパーが示した、デジタル技術の導入による給与増加の可能性は、そのような社会的要求に応える具体的な手段を提供しています。

同ホワイトペーパーの発表は、看護DXサービスの業界においても、大きな影響を及ぼすことでしょう。
このような先駆的な取り組みが注目を集めることで、他の看護DXサービス提供企業も、看護職員の給与向上に貢献するようなサービスの開発や改善に力を入れるようになる可能性が高まります。
これにより、看護業界全体のデジタル化が加速し、看護職員の労働環境改善だけでなく、医療サービスの質の向上にも寄与することが期待されます。

看護管理者は、このような業界の動向に敏感であり続けることが重要です。
デジタル技術の活用による給与向上の可能性を含む、業界の最新情報を追跡し、その知識をもとに看護職員のモチベーション向上や職場環境の改善に努めることが、質の高い医療サービスの提供を継続するための鍵となります。
今後もニュースのツボをしっかりと押さえ、医療現場でのデジタル技術の活用を推進していくことが、看護管理者には求められています。

引用・参考文献

1) 株式会社ゼストHPより.生産性64%アップの可能性を示唆! 事業成長を加速させる勝ち筋~ここにしかないデータを大公開~.https://zest.jp/column/whitepaper-productivity(2024年2月26日閲覧))

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年6月号
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