部下を信頼してリーダーシップを委ねてみようということを前回お話しましたが、それには信頼関係が大切になります。
日頃から部下との信頼関係を築くのに効果的な手法の一つが、上司と部下の1 対1 のミーティング、すなわち1 to 1 ミーティング(以下、1 to 1)です。
ただ、そのやり方を間違えてしまうと、残念なことにまったくの逆効果となってしまいます。
1 to 1 でよくある失敗が「部下の意見を遮る」「否定する」「アドバイスしてしまう」です。
本来は部下の意見を聞く場である1 to 1 で、自分(上司)の意見を押しつけてしまうこととなれば、せっかくの場が部下にとっては苦痛となってしまい、関係が悪化してしまうのです。
また、1 to 1 を実施しようと試みても「忙しい」「意味がない」「面倒くさい」という理由でうまく実施されない場合もあります。これらの失敗の多くに、1 to 1 をなぜ実施するのか、その『目的』が明確ではない、ミーティングの『やり方』がわからないといった原因が潜んでいます。
1 to 1 の『目的』には、「①上司と部下の信頼関係の構築 ②部下本人が問題を認識し、自発的に解決、チャレンジ、成長する支援 ③部下のモチベーションとパフォーマンスを高め、組織・チームとしての成果を出すこと」があります。
これらは1 to 1 の実践前に職場に徹底することが重要です。
また、1 to 1の『やり方』には、「①関係性構築(心身健康状態の確認、プライベートの変化についての質問) ②現状理解(頑張っていること、困っていること、不安、課題などについての質問) ③成長支援(業務改善、目標設定、キャリアアップなどのチャレンジ、成長支援についての質問)」の3 ステップがあります。
なお、ルールとして「業務の細かい話はしない」「部下の意見を傾聴し、自分の意見を押しつけない」ことが大切です。
プライベートについては相手との良好な関係性が必要です。ときに自らのプライベートな話を取り混ぜながら、相手が話しやすいような関係を築いてみてください。
1 to 1 の実践は簡単ではありませんが、職場で話し合いながら独自の1 to 1を構築してみてください。
3 回にわたりお話しさせていただいたことが皆さんのお役に立ち、いきいきと輝く組織づくりのきっかけになればうれしいです。
久保美裕(くぼ・よしひろ)
一般社団法人ブレイクスルーバンク 常務理事/絆 代表。成功事例を押し付けるコンサルではなく、各企業の持っている潜在能力を引き出すコーチングをベースに、医療機関、ホテル、流通、飲食チェーンなど業種業態を問わず研修を実施している。
▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2021月12号 https://store.medica.co.jp/item/130212112
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ https://store.medica.co.jp/journal/21.html