人手不足が深刻な問題となっています。
そこで働く人を増やすという観点から、「多様で柔軟な働き方が必要だ」といわれるようになりました。
なぜでしょうか。
これまでの日本企業では、正社員が業務の中心を担う一方で、その他の労働者はサポート役に回るという二極化が見られました。
前者の場合、配置転換や転勤、時間外労働を伴うことが多く、そのような状況下で夫婦双方が働くのは現実的ではありません。
また高齢者がハードワークを希望することは少ないでしょう。
そこで働き手を増やすために、仕事内容や勤務地、また時間外労働の有無などを選べるようにすることが重要となります。
これが多様という言葉の意味です。
また柔軟とは、勤務地や労働時間を労働者側が選べるということで、テレワークやフレックスタイムなどが想定されています。
たとえば、コンピュータを使って作業をする仕事ならば、どちらも実現可能でしょう。
しかし看護師の働き方を考えると、テレワークはおそらく無理でしょう。
また、働く時間を自由に選ぶことにも困難を伴うでしょう。
ある看護師の「昼の3時間だけ働きたい」という希望をかなえるためには、それを補うかたちで、朝と夕方、夜間にシフトに入る人が必要となります。
多様で柔軟な働き方の裏側には、負荷が大きい働き方をする人が不可欠なのです。
「それは若い人にやってもらえばよい」と考える人もいるかもしれません。
しかし、だれもが結婚して子どもを持つとは限らない現代において、「お互いさまだから」という言葉では片づけられない不満が生じます。
夜勤を多く担当する看護師に対して、どのように報いるかなども検討が必要です。
また、仕事の絶対量を減らすことも不可欠です。
看護師でなくてもできる仕事はないか今一度考えてみましょう。
たとえば、シフト管理や調整に管理職の時間がとられていませんか。
現在は利用できるアプリがたくさんあります。
柔軟な発想で、働き方を変えることが求められています。
安藤至大(あんどう・むねとも)
日本大学経済学部教授。1976年東京生まれ。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授などを経て、2018年より現職。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。
▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2024月5号
https://store.medica.co.jp/item/130212405
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