看護管理サポート:メディカ出版

万能な管理者なんていない

患者さんに直接向き合った筆者の臨床経験は 1 年です。その後すぐに看護管理学の教員になりました。
教育・研究の世界に13年間いた後、再び臨床現場に戻ったときの職位は副院長兼総看護部長。通常では考えられないようなキャリアです。

さて、何年か経ったある日の管理室会議でのことです。
ふと思い立ち、『マネジャーの実像』(ヘンリー・ミンツバーグ著)に書かれている「マネジメントタイプの自己診断ツール」を使ってみようと思いました。
10の設問に答えることで、アート型、クラフト型、サイエンス型のどのタイプに近いかがわかるというものです。

その結果は、実に愉快で面白いものでした。
筆者が自分で診断すると「アート型」。これは、アイデアが豊富、直感が働く、情熱的、戦略的といった特徴を持ちます。
ところが、6人の副看護部長たちに筆者がどのようなマネジメントスタイルをとっているかを同じ用紙で答えてもらい、6人の平均をとったとろ、「サイエンス型」になったのです。こちらは、データを使う、分析的、考える、ぶれないといった特徴を持ちます。
もちろんそういうところもあると自覚してはいますが、そういうふうに見えているのは意外で、逆にそれを今後強みにしようと思った瞬間でした。
面白かったのは、自分自身も、周りの誰もが「クラフト型」とは思わなかったことです。
これは、経験、実践、手先、実行などがキーワードになります。臨床経験の少ない筆者は、管理者としてクラフト型で勝負することはまずないと思っていましたが、周囲もそう見ていたことがわかり苦笑した次第です。

この後、それぞれの副看護部長たちの自己診断と他者診断を同様に行いました。
クラフトという自分にはない要素があるものの、それが高い人たちがいてくれて、7人でとてもバランスのよい管理体制を築けていることがわかりました。
みんなが同じように何でもできるという組織もよいでしょうが、筆者は、マネジメントスタイルに凸凹があったほうが、助けを求められるし、自分を許せるし、強みを生かせる
そして何よりも楽しいと思っています。

勝原裕美子(かつはら・ゆみこ)
オフィス KATSUHARA 代表。看護管理学の教員をした後、聖隷浜松病院副院長兼総看護部長。その後、オフィス KATSUHARA を開業。「~すべき」症候群にかかっている看護管理者を対象に、楽にマネジメントを行えるようになる勝原私塾を運営中。

出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2025月1月号

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