不協和音を防ぎ結果にもつながる信頼関係

 プロバスケットボールチームのGM としての仕事やこれまでのチームスポーツの経験を通じて、私は集団のマネジメントについて悩み、多くを学んできました。バスケットボールは1 チーム5 人で試合をします。ボールは1 つですから、あとの4 人はボールを持てません。選手はボールを持ちシュートを打ちたいものです。しかし、勝つためには得点率の高い選手に多くシュートを打たせることが必要で、そのためにパスをする人、リバウンドを取る人、スクリーンをする人など多くの役割があります。選手登録は1 チーム12 人ですが非常に激しいスポーツだけに試合中に何度も交代しますし、けがも多く、同じポジションに2 名以上の選手が必要です。誰がコートに出ても、同じパフォーマンスを出せるチームが長いリーグ戦を勝ち抜けられます。
 そんな中で出場時間の短い選手は不満を抱き、それを口に出す選手もいれば、黙って不満をためている選手もいます。学生時代に“スター”として活躍し、自信と誇りを持った選手ばかりですが、プロレベルになって主力となるのは一握りです。頭ではわかっていても、その事実は受け入れられず、また納得できないものです。チームに不満分子がいると、練習が乱れ、けがにつながることもあり、チームのパフォーマンスとしても低下していきます。監督がそれに気づかなかったり、また悩んでしまったりすることもあります。よくないことは連鎖して、試合で連敗するとチームの雰囲気は悪くなり、体育館やロッカールーム、遠征の新幹線・ホテルで不満を言う選手があらわれたり、逆に妙に陽気に振る舞う集団ができたり、また日本人、外国人選手でグループをつくったりして手がつけられなくなってしまいます。
 GM として私が気をつけているのは早めに手を打つこと、キーとなる監督・コーチと絶対的な信頼関係を構築すること、そして結果を出すことです。実は、「結果=勝利」がいろいろなことを円滑にしてくれます。勝てる集団に選手はついてきます。そうするためには、リーダーが信頼しあって結果にコミットする。そしてささいなシグナルも早めにキャッチして然るべき手を打つことが大切です。何も難しいことをするのではなく、方向性を示して、リーダーがちゃんと見ていることを発信するだけで解決することも多くあります。

阿部達也(あべ・たつや)
大阪エヴェッサGM 兼 株式会社ヘルステック研究所代表取締役。
京都大学在学中に関西選手権大会得点王2 回、関西選抜主将。bj
リーグ専務取締役を経て2019 年からプロバスケットボールB1 の
編成強化部長(GM)。医療・健康系の京大発スタートアップの代表
も兼務。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2021年8月号
https://store.medica.co.jp/item/130212108
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

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