新 型コロナウイルス感染症の最初の感染拡大から 3 回目の夏にこの原稿を書いています。臨床で勤務する看護職は未知のウイルスに恐怖を感じながらも、目の前の対象に、3 年前と変わらず最善の看護を提供しています。また、臨地実習の学生を可能な限り受け入れてくださる実習施設には感謝しかありません。私たち教員も、看護職として疫学調査や職域接種の協力、一部では実際に病棟での看護を行うなど、できる範囲で支援しています。
この 3 年間、私たちは自分自身と家族、職場を守るため、“感染の波の狭間”の時期でさえ、勤務時間内外を問わず緊張感をもって感染対策を行っています。このような中で皆さんは、医療現場の状況に大きな改善を実感することがありますか。 調査によると過重労働をはじめとする労働環境の変化や感染リスクなどを理由に、国内の約 15%の病院で看護職が離職(2022: 日本看護協会)、医療従事者の 24%がバーンアウトを自覚している(2021: 倉敷中央病院)という事実があります。
しかしこのような状況下にあっても、臨地実習の受け入れ施設の中に、看護師の離職率が低下し、さらに職務満足度が上昇、看護師がイキイキと働く姿を目にすることがあります。なぜ離職率が低下したのか、私なりに理由を考えながら実習を行っていました。そこで感じたのは、看護職同士の良好なコミュニケーションが存在していることでした。具体的には、①師長は勤務中に必ず 1回は看護師の名前を呼んで声をかけ、話している ②ナースステーションでスタッフが患者の話をしているときに、自然と師長が会話に入っている ③看護師同士が自然に「ありがとうございます」と言い合える、この 3 点が特徴的でした。
師長にとっては当たり前のことかもしれません。しかしコロナ禍で業務が煩雑化し、人の行き来が困難になり面会が制限される中で、看護職同士のコミュニケーションの機会も減少し、難しくなってきているのではないでしょうか。私たちは言葉を交わすことで、承認の気持ちを伝え、信頼し合うことができるのです。ストレスフルな今の時期こそ、師長から「話す」「声をかける」ことを意識していきたいものです。
森田夏代(もりた・かよ)
東京家政大学 健康科学部看護学科 成人看護学 講師。東京医科大学看護専門学校卒業後、同大学八王子医療センター勤務。看護管理職として複数の病院で経験を積み、2013 年より大学教員として従事。2022 年より現職。
▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2022月11号 https://store.medica.co.jp/item/130212211
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ https://store.medica.co.jp/journal/21.html