本を読まない読書会で新たなアイデアに出会う

 看護師として生涯現役で幸せに働き続けられる自分と看護師の理想的なあり方を考えられる。それをコンセプトに「me&nurse」では、16人の看護師がファシリテーターとなって活動しています。読書会もその一つです。
 看護師の資格を持ちながら看護師をしていない人が全国に約70万人いるそうです。その背景には、日々の忙しい業務に加え、夜勤もこなさなければならない。人のためには尽くせても自分には自信が持てないといった現実があるのではないでしょうか。「me&nurse」では、読書会を通じて自分を取り戻し、日々の仕事にもう一度取り組めるようになってほしいと考えています。現在は、フィンランドの大学院で医療を学んでいる看護師がオンラインで現地の医療情報を発信する「フィンランド発の読書会」も行われています。
 本を読む時間すらとれない……。そんな人でも参加できる読書会です。私自身も“読書家”ではありません。読書感想文では小5のときに偉人伝で「野口英世」を最後まで読んだ記憶がありますが、それ以降は、はじめとあとがき、作者の経歴を見て感想文を書くことが習慣になっていました。社会人になってからも、専門冊子以外はたまに読む程度でした。しかし2015年、当時働いていた会社が買収されるという大きな出来事があったとき、ある一冊の本と出会いました。その本の中に読書会開催の記事があり、その読書会に参加したことが、「me&nurse」の読書会につながっています。
 医療・介護の現場で働く人の中には、読書に苦手意識を持っている人は少なくないと感じています。日々の忙しさのほか、本は最後まで読んで正確に理解すべきといった読解力重視のパラダイムがその原因かもしれませんが、本を正しく読む必要はないのです。この読書会は、本を読まなくても参加できる読書会です。未読のまま参加して、目次を見て興味を持ったところから読むのもよし、たまたま開いたページから読み始めるもよし。これこそ“本を読まない時代”にふさわしい読書術だと思います。一冊すべてを読まなくても、読んだ部分をきっかけに自分の意見を伝えることができます。それを何人かで分かち合う。するとおもしろいことに一冊の本から全く違った感想が飛び交い、自分が読んでいない部分もほかの人から学ぶことができるのです。

小西ゆかり(こにし・ゆかり)
一般社団法人 me&nurse 代表理事 兼 SOMPO ケア人材担当。
第3 の学びの場(サードプレイス)と看護師が生涯現役で働き続けられる環境を提案する。2015 年より医療・介護交流を図る場での読書会を定期開催。2018 年東京証券取引所にて単独講演会を開催し初の 400 人集客。奄美大島出身。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2023月8号
https://store.medica.co.jp/item/130212308
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html
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