組織のタイムマネジメントをよくする方法

第6回 組織のタイムマネジメントをよくする方法(看護管理者のためのタイムマネジメント)

医師の働き方改革を進めるためには、医療機関全体でタイムマネジメントを行わなければなりません。
そのためにも管理職(看護管理者)が時間的ゆとりを持つことが重要であり、その方法を前回の記事でお伝えしました。
今回は、組織のタイムマネジメントについて解説していきます。

業務改善は組織のタイムマネジメントである

業務改善というと、大がかりな取り組みやシステムの導入などが思い浮かぶかもしれませんが、小さな取り組みであっても、効果があればそれは業務改善です
個人で時間効率を上げていくことをタイムマネジメントと言いますが、それを組織で行うものを業務改善と考えていただければ良いでしょう。

業務改善への取り組みは、最初は小さな取り組み、かつ全員で一斉にやれば時間の効率化が図れるものを探して開始することをお勧めします。
また、書類のフォーマットを見直すなど、1回変更すれば、その後継続して効果が見込めるような取り組みもお勧めです。

ただ、こういった小さな改善は、意外と見つかりにくい場合もあります。
1単位あたりの効果が小さく見えるものは「慣れ」の問題だと捉えて、見落としてしまうからです。
「ちょっと不便だけど、慣れてしまえば気にならなくなりますよ」というような感じです。
では、小さな改善の種を見つけるにはどうすれば良いでしょうか。

業務改善の種はどこに埋まっているのか

業務改善の種を探す際のよくある間違いは、ご意見箱のようなものを設置して毎月1枚改善の種を募集するとか、毎月1回改善会議を開催するなどです。
これではプレッシャーになりますし、やらされる側からすると、余計な業務が増えたような印象を受けます。
これらのように半強制的にやらされると、良いアイデアは出てきません
せいぜい無難なアイデアが最初に少し出るだけでしょう。
実際にあった話ですが、ある製造業の研修に行った際、「まだ今月の改善アイデア考えていないんですよね。何かないですか?」と、めんどうくさそうに話す管理者も意外と多く見受けられます。

結論をお伝えすると、業務改善の種は「愚痴」に埋まっています
ここでいう「愚痴」は個人へのものではなく、組織の制度や職場の作業動線といった労働環境への不満です。
例えば、よく使う道具なのに保管場所が遠いとか、入力作業に使う端末やアプリが使いにくいとか。
こういった『ちょっとした不満』が業務改善(小さな改善)の種なのです。
確かに1回の改善効果は低いかもしれませんが、こうしたちょっとした不満を改善していくことで、業務改善への抵抗感が減り、小さな成功を繰り返すことで改善活動の習慣化にも役立ちます

組織のタイムマネジメントを向上させる意外な方法とは

愚痴が業務改善の種だと認識できたら、組織のタイムマネジメントを向上させるためにやるべきことは「愚痴大会の開催」です。
ただし、単に愚痴を言って終わりになってしまわないように注意する必要があります。
そのためには勉強会という体にして、職場のちょっとした不満や「これ、もうちょっとなんとかなりませんか?」という部分を具体的に洗い出してもらうのです。

また、このような勉強会という体での愚痴大会は、心理的安全性の担保が必要です。
よくある業務改善会議の際の「言い出しっぺが責任を持ってやりましょう!」というプレッシャーは排除しましょう。
みんなが合意して、みんなが、みんなのために行うことを前提に進めましょう。
そのために、全員が何らかの役割を担当するなど工夫をしてください

さらに、心理的安全性を担保するために、勉強会や話し合いの当日だけでなく、普段から心を開いて話し合える関係を築きましょう
そうなると、これまでお伝えしてきた「人間関係改革」や次回お伝えする「コミュニケーション」の重要性が、さらにお分かりいただけると思います。

愚痴を言い合える関係を築き、勉強会など、心理的安全性が高いクローズドな場を設け、その愚痴を二度と誰も口にしなくなるように業務改善を進めていきましょう!

今回は組織のタイムマネジメントを良くする方法をお伝えしました。
次回は、コミュニケーションでタイムマネジメントを向上させる秘訣を解説していきます。
コミュニケーションは目に見えないため、注目度は低いですが、最重要課題と言っても過言ではありません。
組織がガラッと変わりますので、楽しみにお待ちください。


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山本武史(やまもと・たけし)
ポテンシャルビジョン代表
看護部専門組織マネジメントコーチ
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクテイブ・コーチ(CPCC)

200床以上の病院看護部を専門に、人間関係を理由とした離職とメンタル不調による離脱を防ぐ専門家。看護管理者のマネジメント能力を高めて「やめたくない看護部」をつくり、心理的安全性とワーク・エンゲイジメントの向上をサポートしている。

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