うまい仕組みのつくり方

はじめまして。日本大学経済学部の安藤至大です。
専門は労働経済学で、働き方に関する仕組みづくりについて研究しています。
より具体的には、人と仕事などのマッチングについての研究を最近は行っています。
 
マッチング理論は、医学の世界でも活用されているのでご存じの方も多いでしょう。
たとえば、医学部を卒業して国家試験に合格した新人医師がどの病院で臨床研修を受けるのかという配属決定は、2003年よりマッチング理論に基づいて行われています。
過去のやり方とは異なり、医学生の側からは自分の行きたい病院を行きたい順番に正直にリストとして提出するのが最適になっているという意味で、これはうまい仕組みであるといえるでしょう。

「うまい仕組み」をつくるためには想像力が重要です。
関係するさまざまな立場の人がどのように考えて行動するのか、またルールが悪用される可能性はないかなどもよく考える必要があるからです。
そして究極的には、参加者が自分の気持ちに素直に従って行動するだけで、社会的に望ましい結果が実現できる仕組みが求められています。

看護師の皆さんの働き方を考えても問題は山積みです。
人手不足は深刻ですし、仕事はどんどんと高度化していきます。
また社会変化により、従来は機能していたやり方が通用しないケースも増えてきました。
たとえば、ライフイベントに関する選択が多様化している現代では、昔ならば「お互いさまだから」といえたようなことでも、納得してもらうのが難しいこともあるでしょう。

では、若いうちは夜勤を多めに負担し、子どもが小さいうちは日勤のみで働くといった役割分担はどうでしょうか。
今日では、結婚するか、また子どもを持つかといった選択が必ずしも皆に共通ではなくなったため、夜勤を担当することに対して直接的なインセンティブが必要かもしれません。

次回からは看護師の皆さんの働き方について、一緒に考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

安藤至大(あんどう・むねとも)
日本大学経済学部教授。1976年東京生まれ。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授などを経て、2018年より現職。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2024月4号
https://store.medica.co.jp/item/130212404
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

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