医療の現場で、患者と多職種をつなぐ“かなめ”となるのは看護師です。
その連携の基盤となるクリティカルパスをどう育て、どう活かすか―看護の質を支え、組織を動かす視点が、あらためて管理者に求められています。
東京医療保健大学 副学長 坂本 すが
基本から実践、応用までを網羅的に解説
日本でクリティカルパスが導入されて約30年。クリティカルパスは今や医療の質の標準化やチーム医療推進のための必須ツールとなっています。
本書『最新クリティカルパス教本』は、日本医療マネジメント学会による監修のもと、クリティカルパスの基本から実践、応用までを網羅的に解説した一冊です。
教本としての体系性を重視しつつも、実際の現場で使える視点や事例が豊富に盛り込まれており、理論と実務の両面をバランスよく学べる内容となっています。
最大の特徴は、入門者から指導者まで幅広い読者を想定し、段階的に理解を深められる構成にあります。
クリティカルパス作成の手順や運用上の工夫、さらにDPC 制度やICTの進展に対応した最新の知見も盛り込まれており、現代医療におけるクリティカルパスの意義と可能性を再認識させられます。
また、急性期疾患に限らず、退院支援クリティカルパスや地域包括ケアとの連携といった、クリティカルパスの発展的活用についても触れられ、今後の医療マネジメントの方向性を示唆している点も評価できます。
導入から30年の節目の学びにおすすめ
クリティカルパスの導入から30年という節目を迎えた今こそ、その意義と活用方法を再評価すべき時期と考えます。
本書は、従来のパスの在り方を整理しなおすとともに、現代の医療環境に即した「新たなスタンダード」として、多くの医療職に読まれるべき一冊だと考えます。
「人生100年時代」を迎え、患者のニーズはますます多様化・複雑化しています。それにともない、医療者間や地域との連携は、もはや選択肢ではなく不可欠な要素となっています。
こうした中で、情報を媒介し、支援のプロセスを医療者と患者の間で可視化するツールとして、クリティカルパスの重要性はこれまで以上に高まっています。
本書を手に取ることで、クリティカルパスの本質を理解し、実践に生かすための多くのヒントが得られることでしょう。
加えて、本書は医療現場だけでなく、教育の場においても大いに活用できる内容となっています。
看護管理者にとって、クリティカルパスを体系的に学ぶための貴重な教材だと確信しています。
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坂本 すが(さかもと・すが)
東京医療保健大学副学長。経済学博士/看護師/保健師/助産師。和歌山県龍神村生まれ。助産師を経て、看護管理者として現場のマネジメントに携わる。2011年から3期6年、日本看護協会会長を務める。
▼出典元:Nursing BUSINESS 2025年11月号
目 次
【第1部 院内クリティカルパス】
■第1章 行政の視点からみたクリティカルパスへの期待
■第2章 クリティカルパスとは
■第3章 クリティカルパスの構造と作成・運用の基本
■第4章 クリティカルパスと記録
1 クリティカルパスと記録
2 クリティカルパスと診療記録
3 クリティカルパスと看護記録
■第5章 クリティカルパスと医療の質
1 標準化によるアウトカム志向のクリティカルパス作成
2 アウトカム評価とバリアンス分析
3 ビッグデータ分析
■第6章 クリティカルパスと臨床指標
1 クリティカルパスと臨床指標
2 診療ガイドラインを用いた臨床指標の設定
3 診療ガイドラインを用いた臨床指標の作成方法
4 臨床指標の最近の動向
■第7章 クリティカルパスと組織運営・経営
1 クリティカルパスが組織運営に及ぼす効果
2 クリティカルパス運用におけるリーダー・マネジャーの役割
3 クリティカルパスを組織活動にするための体制作り
4 多職種におけるクリティカルパスの意義
5 各職種の役割
・1 医師の役割
・2 看護師の役割
・3 薬剤師の役割
・4 臨床検査技師の役割
・5 診療放射線技師の役割
・6 リハビリテーション専門職の役割
・7 管理栄養士の役割
6 病院組織における人材育成の重要性
■第8章 クリティカルパスとDPC
■第9章 クリティカルパスと医療安全
1 クリティカルパスを医療安全に活用するために必要な条件
2 医療安全を担保するためのクリティカルパス作成上の注意点
3 医療安全を担保するためのクリティカルパス運用上の注意点
■第10章 電子化クリティカルパス
【第2部 地域連携クリティカルパス】
■第1章 地域連携クリティカルパスの基本概念
■第2章 地域連携クリティカルパスの作成と運用
1 地域連携クリティカルパスの作成と運用
2 大腿骨近位部骨折地域連携クリティカルパス
3 脳卒中地域連携クリティカルパス
4 がん地域連携クリティカルパス
5 糖尿病地域連携クリティカルパス
6 骨粗鬆症治療地域連携クリティカルパス