COVID-19 対応で考える地域とのつながり

 私の住んでいる地域は「人のふれあい」や「関わり」が深いとてもよい地域です。私たちはそんな地域のつながり(地域資源のヒト・モノ・コト・場)にあった事業展開を行っています。個別ケアから地域ケアへ、ケアと福祉を融合した在宅看護+地域マネジメントを実践し、利用者さんは近隣住民と互いに支え合い、それぞれの役割を地域の中で発揮できるようになっています。

 そんな日常に「COVID-19」が発生しました。2020年2月中旬、私たちはまず、利用者さんが自分で自分を守れるように関わり、看護を提供しました。さらに、訪問移動中には地域の方や缶を集める仕事の方などに、挨拶をしながら「困ったことはないですか」と声をかけました。近隣の介護職の方には感染予防の考え方を伝え、医療衛生材料を地域で取り寄せるなどの活動を行いました。そして外出自粛が求められた4月、「感染予防だけでなく、癒しや希望を感じられるようにしたい」と考え、チームで話し合いました。すると子育て中のメンバーが中心となり、メンバーの子どもたちとその友人11 名(通称、まるごとkids)が「これをステーションに掲げてください」と垂れ幕を持ってきてくれました。そこには「ひとりじゃないよ。そうだんしてね」と書かれており、私たちが考えるケアが子どもたちにも届いていたのだと感動しました。

 そんな活動を続けていたある日、私は散歩中の年配の方とお話しする機会がありました。その方は「歳をとって500m圏内までしか歩けない。でもこうやって歩いていると、たくさんの人が声をかけてくれるからうれしい」と話してくれました。“地域全体が気にかける、関わる”というケアがとても大切なのだと学びました。地域包括ケア時代の主役は地域の一人ひとりです。その一人ひとりが自分の人生の主役として生きるために、持っている力を暮らしや地域の中で自ら引きだすことができる、そんなつながりや思いやりがここにはあると再認識しました。このケアの輪をつなげて、有事の際も安心して暮らせる社会を子どもたちに託せるように、地域住民主体の“地域まるごとケア”を広げていきたいと考えています。

磯野祐子(いその・ゆうこ)

一般社団法人コ・クリエーション 代表理事。病院や訪問診療、訪問看護、デイサービス、地域包括支援センター等で経験を積む。国際医療福祉大学大学院h-MBA修了。笹川保健財団「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」3期生。2017年8月「地域まるごとケアステーション川崎」開業。防災士の資格を持つ。

 

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2020年2月号
https://store.medica.co.jp/item/130212102
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

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