先を読んで実現する 守りではなく攻めの看護管理

 看護部長になってから一番の課題は人材確保でした。看護の質を向上させようとすると質より量が優先であり、当時所属していた病院はグループ21病院の中で2番目に看護師数が少ない病院だったため、毎年少しずつ看護配置基準を上げていくことが目標でした。地方での就職説明会や学校訪問などを積極的に行い、募集用パンフレットもほかの病院と差別化するため、いろいろと工夫を凝らしました。そして今から約15 年前に254 床の病院で40人以上の新卒看護師を確保することができたのです。当時は人件費の高騰などについて本部からあれこれと言われ、肩身が狭い思いもしましたが、タイミングよく診療報酬改定があり“7:1”が新設されることになりました。そして2番目に看護師不足だった病院が90 床増床と同時にグループで最初に“7:1”を取得することができ、人件費以上の収入増につながりました。

 ただ、これは偶然ではありません。診療報酬改定の前年夏頃から私は看護協会や厚生労働省の動きを見て、「看護配置の引き上げは間違いない」、そう思っていました(周りからはありえないと言われたりもしましたが)。この時期から、看護必要度、退院支援、夜間看護配置、認知症ケアなど診療報酬改定をはじめ変化を追いかけるのではなく、先手を打って結果が後からついてくるようなことが多くなりました。実はそのような看護管理ができる人材をグループ内で育成することを命じられ、年間を通して研修の企画・運営や講師をほぼ一人でやっていたのです。しかし、何年かすると限界を感じるようになり、もっと幅広く全国に通用するような研修にできないかと考えるようになりました。そこで思いついたのが認定看護管理者のファーストレベルの立ち上げでした。

 当時は民間病院が教育機関になるのは初めてでしたが、多くの著名な講師の方々にも協力いただき、認可を受けることができました。その後、質の高い看護師の育成を目的として着手したのが「特定行為に関わる研修制度」でした。厚生労働省へ一人で出向き、説明会を聞き、「医師の協力」が得られれば開講できると知り、約2 カ月をかけて、よくわからないままでしたが12 科目のカリキュラムなどを作成し、第1 回目の審査で民間病院初(実際は2 病院が認定)の研修施設にすることができたのです。

工藤 潤(くどう・じゅん)

医療法人ヘブロン会 大宮中央総合病院 副院長 兼 看護局長。認定看護管理者。1990 年看護師免許取得後、2000 年に看護部長就任。グループ病院のため異動により3病院で看護部長に就任。2020年退職し現在に至る。経営やマネジメントの講演や執筆多数。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2021年5月号
https://store.medica.co.jp/item/130212105
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

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