これからの地域包括ケア・訪問看護に求められること

 

 日本が向かっている超高齢社会に求められることは何でしょうか。私は地域で暮らす高齢者をケアしながら学ぶ中で、いのちの尊厳をまもる地域・コミュニティケアが必要であると思い実践してきました。そのためには、病院、診療所、介護、福祉機関などが連携し、すべての地域住民が医療やケア、福祉にアクセス・相談しやすい体制をつくるだけでなく、住民一人ひとりが個・地域・社会の“well-being”を考えられるようなアプローチも必要だと思っています。

 そして今、私は日々の活動の傍ら“大都市部の健康課題にケアでチャレンジ”することを行っています。疾患や障害に対するケアだけではありません。人は生きていくうえでさまざまな悩みを抱えます。生きづらさを感じ、引きこもりや貧困などに陥る人もいますが、そうした人たちにケアが届かないことが多くあると思います。私たちは都心部の地域を自転車で回りながら、ちょっと気になる方やホームレスの方に挨拶をして対話や場を楽しんでいます。

 ある日、缶集めを仕事にしている男性が私に「缶は1㎏70 円だよ。持ってきてくれたら、タバコぐらい買えるから、代わりに持っていってあげるよ」と教えてくれました。会話の中で缶をリサイクルする私の手間のことまで考えてくださるやさしさに感動しました。名前は知らなくても、その場・空間が互いを癒やし、ケアリングする。生きる力を自ら引き出すことができる。地域全体がケアの場・空間になっている地域看護ってすごい! と思いました。そう感じる一方で、そのような場・空間になるためには住民一人ひとりの対話や教育も必要だと考え、昨年から保健師のメンバーと協働してのポピュレーションアプローチ(母子保健)とプライマリ・ヘルス・ケアにもチャレンジしています。

 訪問看護という“点”のケアから“面”となる地域ケアへ。ケアの視点で地域を看る! 専門職だけが利用者さんをケアするのではなく、その方を全人的に統合ケアマネジメントし、よりよいケアへ有事の際にも安心して暮らせるまちづくりを楽しんでいきたいと思います。

◉ 引用参考文献
磯野祐子.訪問/ 在宅看護から地域ケアへ.Nursing Now フォーラム・イン・ジャパン「在宅看護と持続可能な社会 〜看護師が社会を変える〜」より

磯野祐子(いその・ゆうこ)

一般社団法人コ・クリエーション 代表理事。病院や訪問診療、訪問看護、デイサービス、地域包括支援センター等で経験を積む。国際医療福祉大学大学院h-MBA修了。笹川保健財団「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」3期生。2017年8月「地域まるごとケアステーション川崎」開業。防災士の資格を持つ。

 

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2020年3月号
https://store.medica.co.jp/item/130212103
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

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