ヒトを大事にする風土・組織づくり

「オレは職員も大事だけど、その家族も大事にしたい!」。数年前に、そう話す経営者に出会えたことに感謝し、以来、自分でもその考え方を大事にしています。人は生活を支えるために働きます。つまり仕事をする目的は生活を豊かにすることです。そして人を大事にする組織は、人が仕事をすることに加え、個々の生活の背景までをも考えます。また、それを支援できるのが管理者の理想だと思います。私自身、私生活が一番であり、仕事の優先順位はその次です。もちろん、それは仕事を一番にすることが悪いという批判ではありません。私も仕事中は一生懸命ですし、皆が働きやすい環境をつくることが管理者の役割だと考え、人を大事にする組織づくりを一番大事にしています。何かあったときには「人を守る」という態度を示し、皆には「守られている」ということを日常の態度や言動から感じ取ってもらえるよう心がけています。

 ただ、看護部長となって約20 年。人を守ることを実行する中で、「果たして自分のことは誰が守ってくれるのだろうか?」「仕事上の実績を上げることができても、人の感情や悪意に巻き込まれたときに、自分は守られていただろうか?」と思うこともありました。そして自分より上の立場の人が自分を助けてくれたかと問うたとき、やはり「自分は自分で守るしかない」というところに至るのです。看護部長は孤独です。しかしそんな中でも一緒に働く仲間が支えてくれることもあり、救われることも多々ありました。人とのつながりは財産です。「自分が、自分が」と自己評価をアピールしあっている集団では働く意欲もなくなりますし、そのような組織にならないよう、自分のスタイルを貫きたいと思っています。

 最後に男性の看護部長経験者として世の男性看護師に助言をするならば……「女性を敵に回してはならない」。看護界は圧倒的に女性が多く、女性の団結力は確固たるものです。また、男女関係のトラブルは、火のないところに煙がたったり、噂に尾ひれがついたり、圧倒的に男性が不利と感じることもあります。世の中のモラルに反すると、言葉の重みもなくなり、信用を一気に失うことがあるので十分に注意すること。それが男性看護部長として20年間継続できた要因の一つでもあります。

工藤 潤(くどう・じゅん)

医療法人ヘブロン会 大宮中央総合病院 副院長 兼 看護局長。認定看護管理者。1990 年看護師免許取得後、2000 年に看護部長就任。グループ病院のため異動により3病院で看護部長に就任。2020年退職し現在に至る。経営やマネジメントの講演や執筆多数。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2021年6月号
https://store.medica.co.jp/item/130212106
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html

Scroll to Top