前回、ヤングケアラーへの支援の鍵の一つに、ケアを必要としている人を把握している医療機関において、ヤングケアラーを発見する取り組みが進むことがあるとお伝えしました。
医療機関におけるヤングケアラーを発見する取り組みは、診療報酬における加算の算定対象となっており、国も後押ししています(「入退院支援加算」の対象となる「退院困難な要因を有する患者」および「精神科入退院支援加算」の対象となる「退院困難な要因を有している患者」に、ヤングケアラーとその家族が加えられています)。
看護管理職には、医療機関が患者の家族へのケアや支援に取り組む方針を持つよう働きかけ、医療機関におけるヤングケアラーを発見する取り組みを進めることが期待されます。
医療機関は患者に医療を提供することを第一義的役割としているため、患者の家族にケアや支援を提供することは二の次になりやすい状況にあります。
そのため、医療機関でヤングケアラーを発見することが進むには、医療機関に家族へのケアや支援に取り組む方針やヤングケアラーの発見に取り組む方針があることが重要になります。
この方針には、どのようにヤングケアラーの「発見」と「対応」に取り組むかについての方針が含まれます。
前者は、たとえば患者に関する情報を収集する際、患者が養育者の役割を担っておりケアを必要とする状態にある場合には、通常の情報収集に加えて、子どもを含む家族内でのケア役割の分担状況についても聞き取り、子どもがヤングケアラーとなっている可能性があるかを把握するなど、いつ、誰が、どのような方法でヤングケアラーの発見に取り組むかに関する方針です。
後者は、たとえば子どもがヤングケアラーである可能性がある場合には医療ソーシャルワーカーが子どもへの支援の必要性について家族と面談を行う、支援が必要な場合には地域連携室を通じて家族を公的支援機関につなぐなど、いつ、誰が、どのような方法で子どもと家族に対応するかに関する方針です。
これらの方針の意義や必要性、内容を、研修等を通じて看護師ら現場のスタッフに浸透させていくことも重要です。
看護管理職には、現場のスタッフが家族全体をケアする視点やヤングケアラーの視点を持ち、日々の診療や看護を行える体制づくりに取り組むことが望まれます。

森田久美子(もりた・くみこ)
立正大学社会福祉学部社会福祉学科 教授。研究分野は精神保健ソーシャルワーク、ケアラー支援。一般社団法人日本ケアラー連盟理事として、ヤングケアラーを支援するための政策提言等に取り組む。
出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2025月6月号









