日本看護サミット2023

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

2040年に向けた社会の実現への貢献を目指す

2024年2月14日、看護職の国家試験が無事に終了した後、看護の未来を形づくるための重要な一歩として、『日本看護サミット2023』が開催されました。
このサミットは、日本看護協会の主催のもと、厚生労働省や文部科学省といった看護に関連する行政機関、日本医師会や日本薬剤師会などの職能団体、日本病院会や全日本病院協会といった医療機関団体、さらには日本助産師会や全国訪問看護事業協会、日本看護系大学協議会、認定看護管理者会など、看護に関わる多様な職域や教育機関の後援を受け、2040年に向けた社会の実現への貢献を目指しています。

2年に一度開催されるこのイベントは2015年から続き、看護の将来像を描き、その実現に向けた具体的なアクションプランを提案する貴重な機会となっています。
集まった看護のトップリーダーたちは、看護の現場で直面する政策課題に対する解決策を模索し、看護職の資質向上や働きやすい環境の整備に向けた戦略を議論します。
これらの議論は、看護管理者にとって重要な看護界の流れを知るための“ツボ”となります。

2023年度のメインテーマは 「地域社会を支える看護職への生涯学習支援」

2023年度のメインテーマ「地域社会を支える看護職への生涯学習支援」に関しての背景を少し解説します。
日本看護協会は、2023年6月に「看護職の生涯学習ガイドライン」を公表しました1)
このガイドラインは、少子高齢化の進行、価値観の多様化、デジタル化の推進、持続可能な開発目標(SDGs)達成への取り組み、人生100年時代の到来など、社会の変化に対応する看護職の役割がより重要になっている現代において、看護職が新たな知識や技術を学び、継続的に自己の能力を開発・維持・向上させるための指針を提供します。

また、このガイドラインの目的は、看護職の活躍する領域や場の多様化に伴い、社会からの期待が高まる中で、看護職がその使命を果たし続けるために、主体的な学習への取り組みと能力の向上を図ることにあります。
つまり、看護職が生涯を通じて主体的に学習を続けるための考え方と、組織が看護職の学びを支援する際の重要なポイントを示しています。

生涯学習は、免許取得後だけでなく、看護基礎教育の段階からその重要性を理解し、看護職としてのキャリア全体を通じて継続することが推奨されます。
このガイドラインは、以前に日本看護協会が公表していた「継続教育の基準」に代わるものであり、看護職を雇用する組織において、生涯学習を支援するための取り組みの指針として位置づけられています。

なぜ今「生涯学習」なのか

とくに、「生涯学習」というテーマがここまで大切にされている背景には、少子高齢化という社会的現象があります。
子どもの数が減少する一方で、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」により看護師の数は過去30年で2倍以上に増えてきました。
しかし、これまでのように人手を確保することに注力するだけでは、看護の質の追求へのシフトが求められる現代のニーズに応えることは難しくなっています。
このため、生涯学習の支援が看護職の専門性を深め、質の高い医療サービスを提供するために不可欠であると認識されています。
生涯学習支援の推進は、看護職が常に最新の知識と技術を身につけ、変化する社会のニーズに応えられるようにするための鍵であり、看護業界の未来を明るく照らす重要な取り組みです。

サミットに参加して

筆者が同サミットに参加して個人的に感じたこととして、井伊久美子氏(日本看護協会・副会長)の講演がとくに印象的でした。「さまざまなバックグラウンドを持つ看護職を支える」という言葉に、大きな安堵感を覚えました。
これまで看護業界で異質と見られがちだった自分の存在が受け入れられ、価値を認められていることを実感する瞬間でした。
この講演は、看護業界がより温かく、包容力のあるコミュニティへと進化していく過程を示唆しており、看護職としての誇りと所属感を深める機会となりました。

引用・参考文献

1) 日本看護協会.看護職の生涯学習ガイドライン.https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/publication/pdf/guideline/lllearning- guide.pdf(2024年2月26日閲覧)

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年5月号
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