タイムマネジメントでこんな間違いしていませんか?

第3回 タイムマネジメントでこんな間違いしていませんか?(看護管理者のためのタイムマネジメント)

医師の働き方改革を進めるためには、医療機関全体でタイムマネジメントを行わなければなりません。そのためには医療機関全体で人間関係の改善がカギになるということをお伝えしてきました。
今回は、医療従事者個々のタイムマネジメントを向上させるポイントを解説していきます。

タイムマネジメントの3大間違い

ところで、タイムマネジメントでこんな間違いをしていませんか? 例えば、時間短縮術だとか、何でもかんでも前倒しにしてやれることをやるとか、とにかく効率を高めれば良いのだとか。
確かにこれらも必要ではあるのですが、本質を考えると少し違います。

時間短縮できることはすれば良いのですが、これだけではある一定以上の業務効率の向上にはつながりません。また、全ての仕事を前倒しでできれば良いのですが、おそらくそのような余裕はないのが現状ではないでしょうか。
そうなると、気持ちだけが空回りして、いつまで経っても忙しさから解放されず疲れてしまいますよね。そして、効率を高めようにも、短期的な視点で取り組むことでかえって無駄が増えることも結構あるものです。

では、どのようにすればタイムマネジメントが機能していくのでしょうか。
そのポイントは先ほどの逆で、長期視点で考え、前倒しするべきかどうか吟味し、効果的な時短術を取り入れるというものです。
その出発点となるところから見ていきましょう。

最も大事なことは最も大事なことを最も大事にすることである

タイムマネジメントで間違いを犯す最も大きな原因は出発点を見誤ることです。そもそも何のために取り組むのかを見失ってはいけません。
第1回目でもお伝えしたとおり、タイムマネジメントの本質は、本来優先すべきことを優先するための考え方、時間の割り振り方のことです。
つまり、瑣末なことにとらわれずに、最も大事なことを大事にすることに意味があるのです。
いくらたくさんの仕事量をこなしたとしても、それが大した仕事ではなく、逆に重大なミスを犯してしまっては残念極まりないですよね。

ここで仕事の優先順位について考えてみましょう。仕事は重要度と緊急度の2軸で切り分けて優先順位をつけるのが定番のやり方です(下図参照)。

スティーブン・R.コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版(2013)より筆者一部改変
図 時間管理のマトリクス

のように、まず第1領域から第4領域にまで仕事(やるべきこと)を割り振っていきます。そして優先順位をつけていくのですが、ここからが最も重要なポイントです。
ほとんどの人が優先順位を間違えるのは、「緊急度」だけにとらわれて、第1領域→第3領域→第2領域→第4領域の順になってしまうのです。
本来の順序は、第1領域→第2領域→第3領域→第4領域のように領域の番号順になるのです。

避けられない緊急事態は意識せずとも着手する

第1領域は例にある通り、無視できないものばかりです。
起こってしまえば避けられませんし、先延ばしにもできません。他の何を差し置いても対処せざるを得ないのです。裏を返せば、意識しなくても良いということです。
となると、意識的に最優先に取り組みたいのは、第2領域ということになりますが、この領域の仕事は緊急ではないため、多くの人が先延ばしにしがちです。
しかし、この領域を放置しておくと、第1領域の火種になりかねません
患者や家族と人間関係ができなかったが故にクレームに発展したり、予防リスク対策が不十分なためにインシデントやアクシデントに発展してしまったり、準備を怠ったがために会議時間が必要以上に伸びてしまったりするのです。

ところで、第1領域は対処せざるを得ないというのとは別の特徴もあります。それは、解決まで時間が読めないということです。一度起こってしまったら、どれだけ時間をかけても対処せざるを得ないため、他のすべての仕事が滞ってしまいます。
だからこそ、緊急ではないうちにしっかりと第2領域の仕事に手をつけていきましょう
そうすることによって、第1領域の仕事が減り、第3領域の仕事に取り組む時間も生まれてくるのです。
ここまでが長期的視点で前倒しすべき仕事(第2領域)についての紹介です。
効果的な時短術は第3領域に適用していきましょう。

先手を取ってゆとりをつくるスケジュール管理術

最後に、ゆとりをつくるスケジュール管理術を紹介します。
多くの人が締め切りに追われて仕事をしています。
その原因は、締め切りで仕事を管理しているからです。
ゆとりを持って仕事を進めようとするならば、締め切りではなく『着手するタイミング』で仕事を管理すべきなのです。

例えば、書類の提出期限が4月10日、作成するのに下調べに2日、下書き1日、確認に2時間かかるとします。
確認作業は時間を空けたいので翌日に作業するとなれば、全部で4日間かかる仕事ということになります。
つまり、4月6日に着手すれば締め切りに十分間に合います。
緊急事態を想定して、もう1日プラスして4月5日に着手できればなお良いですね。
そして、それを忘れないようにするために予定に『4月5日〇〇書類作成開始』と入れておきましょう。
これで締め切り間際に慌てることはないはずです。

今回は、個人のタイムマネジメントのポイントを紹介しました。
次回は、もう少し広い視点でタイムマネジメントの基本を解説していきます。
楽しみにお待ちください。


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山本武史(やまもと・たけし)
ポテンシャルビジョン代表
看護部専門組織マネジメントコーチ
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクテイブ・コーチ(CPCC)

200床以上の病院看護部を専門に、人間関係を理由とした離職とメンタル不調による離脱を防ぐ専門家。看護管理者のマネジメント能力を高めて「やめたくない看護部」をつくり、心理的安全性とワーク・エンゲイジメントの向上をサポートしている。

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