看護師長への昇進は、大きな責任への期待と未知への挑戦が入り混じる人生の転機。
任命され、新たなステージに挑む看護職が知っておきたいこととは?
2025年8月に刊行された『任命! 看護師長:実務にすぐ役立つ知識・スキル・マネジメント思考』の編著者である松浦正子氏に、同書についてお聞かせいただきました。
「看護師長への任命」は看護師キャリアの節目
役職や立場が変わるとき、人は期待と不安のあいだで揺れ動きます。
中でも看護師にとって「看護師長への任命」は、これまでの経験を活かしながらも、まったく新しい視点や重い責任を求められる、大きな転機であり、キャリアの節目でもあります。
リーダーとしての役割を担いながら、現場のマネジメントやスタッフの育成、病棟運営など、多岐にわたる業務に日々向き合うことになります。
昇進の喜びや誇らしさを感じる一方で、「私に務まるのだろうか」と戸惑いや不安を抱える方も少なくないでしょう。
私も悩んだ……看護師長一年目
私自身、看護師長に任命されたときを振り返ると、準備期間はほとんどなく、ある日突然の辞令でした。
「看護師長の役割の7割は人間関係の調整」とだけ伝えられ、引き受けた役割は、想像以上に複雑で、戸惑いや葛藤の連続でした。
それでも日々の業務に向き合いながら、自分なりの方法を模索する中で、少しずつ「自分らしいマネジメントスタイル」を見つけていったことを覚えています。
看護師長は、現場をまとめ、チームを育て、組織を動かす重要な立場です。
とはいえ、最初からすべてを完璧にこなす必要はありません。
本書は、そんな新たな一歩を踏み出す皆さんに寄り添い、ともに歩んでいくための一冊として企画しました。
「任命されたばかりで、何から手をつければいいのかわからない……」と不安を抱える方にも、安心して臨んでいただけるよう、看護師長の仕事全体を具体的かつ実践的に紹介しています。
看護師長というポジションは、決して一人で抱え込むものではありません。
仲間と支え合いながら、チームと共に成長していく。
その歩みの中で、本書が少しでも皆さんの力となり、勇気とヒントを届けられたら幸いです。
大阪信愛学院大学 看護学部看護学科看護管理学 教授 松浦 正子
(本書「はじめに」より抜粋)
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目 次
【START!】まずは知りたい! 仕事の全容 〜任命直後の混乱を乗り越える
・看護師長の役割と業務 〜5 つのポイントで整理する
・一般急性期病院の例からみる看護師長のスケジュール 〜日々のサイクルをイメージする
【師長業務 PART 1】病棟管理 〜自部署の管理、どうするの?
〈INTRO〉 看護管理者の考え方・行動は徐々に身に付いていくもの
・ベッドコントロール 〜入退院調整、病棟間やICU からの移動
・他部署との折衝・調整 〜効率的な病床運用を実現する方法
・診療報酬の観点からの確認 〜診療報酬算定のために、管理者として気を付けたいこと
・質管理、業務改善 〜医療・看護の質を数値化・可視化する
・情報共有、情報伝達 〜適切に情報を伝え、共有する方法と実践ポイント
・医療安全 〜対策と部署における安全文化の醸成
・感染管理 〜基本対策、職員教育、発生時の対応
・モノの管理 〜在庫管理と減価償却の重要性
【師長業務 PART 2】労務管理 〜法的OK、スタッフOK の最適解は?
〈INTRO〉法令遵守とスタッフのウェルビーイングを両立させる労務管理とは
・勤務表作成と勤務調整 〜考慮すべき5 つの要素と、決めておきたい基本ルール
・多様な勤務形態の運用と留意点 〜スタッフの能力を最大限に活かすために
・労働衛生管理、超過勤務の管理 〜スタッフが元気にイキイキ働くために取り入れたいこと
・リスク管理①離職防止、ハラスメント対応 〜原因と傾向を知って備える
・リスク管理②災害対策 〜ポイントは「スタッフと一緒に」備えること
【師長業務 PART 3】人材育成 〜人を育てる、むずかしい…
〈INTRO〉人材育成を成功させるアプローチのポイント
・部署における人材育成の考え方 〜未来志向でビジョンを示す
・部署目標管理、目標面接 〜スタッフ育成と質の高い看護へと繋げる
・人事考課(人事評価制度) 〜評価を通して組織の生産性を高める
【師長業務 PART4】セルフマネジメント、院内・院外活動 〜自分の可能性を広げよう
〈INTRO〉自分らしいマネジメントはリーダーシップの持続に繋がる
・新任看護師長として直面するストレス要因と対処法 〜順位を付ける、思考を変える
・マネジメントとリーダーシップのバランス 〜看護師長が身に付けたいリーダーシップ
・会議・委員会 〜フィードバックとフィードフォワードの視点
・他部門、地域との連携 〜看護師長が主導する共学・協働の場