叱る・注意するだけの指導から脱却!教育担当者必見の看護教育リフレクション

教育は一方通行に指導するのではなく、学ぶ側が自ら気づくことで学習効果・育成スピードが格段に向上します。
自ら気づき、学びを概念化するリフレクションを新人・後輩・部下育成に活用するためにどうしたらよいでしょうか。
その方策を解説した新書を上梓した河野秀一氏に、同書について聞きました。

新人・後輩・部下のリフレクション しっかりとできていますか?

私が看護管理者向けの看護マネジメントリフレクションの講義を始めて10 年以上の年月が経ちました。
その間、「若手看護師が行うリフレクションと、それを支援する教育担当者は、しっかりとリフレクションができているのだろうか?」という疑問をずっと抱いていました。
そんなときにある病院と看護協会から、教育担当者向けのリフレクション研修の依頼をいただき、そこで若手看護師に対するリフレクション支援が必ずしもうまくいっていない現状を知りました。

現場では「リフレクション」という言葉が正しく理解されないまま独り歩きしていました。
そして、若手スタッフがリフレクションをしても、教育担当者のコーチングがうまくできていない実態がありました。
「リフレクションは振り返り」と不十分な認識を持ち、面談の場でスタッフに「できなかった場面を振り返って指摘」をすれば、リフレクションを行ったと考える教育担当者が多かったのです。

コーチングではなくティーチングになっている

少し詳しくお話ししていきましょう。
指導場面で一番多い間違いが、このティーチング問題です。
指導の対象者が何かしらの問題を起こしたり、問題に直面したりした際に、指導者が答えをそのまま示してしまっているケースが極めて多く見られます。
看護業務では、ミスがあった場合に患者の命に直結することもあるので、明らかな手順間違いなどの場面では、すぐに手技や基準・手順などを正しく指導することが必要でしょう。
しかし、緊急性が必ずしも高くない場合であれば、じっくりと時間をかけてコーチングし、振り返ることが可能なはずです。
答えを与えるよりも、自分で考えさせて、気づきを生み出すほうがはるかに効果的です。

コーチングとティーチングの使い分けの線引きは悩ましいと感じる場面もあると思います。
判断の一例ですが、自己解決を一つの基準として考えるとよいでしょう(図1)。

図1 ティーチングとコーチングの使い分け
“考え実行する人”を育てる

ティーチングに関連する問題点としてもう1点、指導場面で「考えさせていない」ケースが多く見られます。
ともすれば指導者は、「指導しなければならない」という意識が強すぎて、考えるいとまを与えずに答えを示してしまってはいないでしょうか。
対象者が答えに窮すると、さらに質問したり、待ちきれずに答えを与えたり、場合によっては、言いたいことだけを言って指導対象者の反応をスルーしたりといった状況も見られます。
要は、「待てない」のです。
皆さんはちゃんと相手に考える時間を取っているでしょうか。
追い詰めてしまったり、指導の際に、考えさせる機会を奪ってしまったりしていないでしょうか。

今の医療界を見ると、これまでにないほど、環境変化の激しい時代であるといえます。
これまでの組織であれば、上司や教育担当者が考え、スタッフに指示を出して、そのまま実行してもらえばよかったでしょう。
言われた通りのことができる看護師が求められたのです。
しかし現代は、変化が早く、その変化についていかなければならない時代です。
これからの組織は、たとえスタッフであったとしても、現場で起きることについて「考え実行する人」になる必要があるといえます(図2)。
すなわち、ただ知識やスキルを身につけるだけでなく、そこにプラスして、考えられるスタッフになってもらわないといけないのです。
リフレクションにおいて指導者は、この点を理解してスタッフ育成にあたらなければならないのです。

図2 これからの組織には考え実行する人が必要
正しくリフレクションをするために

先にもお伝えしましたが、リフレクションにおいて正しいコーチングではなく間違ったティーチング、すなわちこれまでと何ら変わらない「指導」になってしまっていることが多くあります。
言わずもがなそこには、リフレクション実施による「気づき」が生まれることはありません。

そうした現状を目の当たりにし、正しくリフレクションを実施し、若手スタッフの支援ができ、効果的な人材育成につながるような教育実践を解説した書籍を作りたいとの思いから、本書の上梓に至りました。

本書では、教育に関わるすべての看護職に正しくリフレクションについて理解をしてもらったうえで現場において実践していただきたく、できるだけ具体的に書くことを心がけました。
後輩指導、支援をどうしたらよいか悩んでいる教育担当者のために、なるべく多くの事例を挙げて解説しています。
本書が、看護教育担当のみなさまのスタッフに対する正しいコーチングとリフレクション支援の一助となれば幸いです。

取材・構成 Nursing Business編集室

河野秀
株式会社サフィール 代表取締役

叱る・注意するだけの指導から脱却しよう
教育担当者・指導者のための“気づき”で導く 新人・後輩・部下 看護教育リフレクション入門
共に振り返るためのプロセスレコードシート収載!
河野 秀一 著
メディカ出版 2024年4月刊行
B5判 136頁 3,080円(税込)
ISBN:978-4-8404-8449-7

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