山あり谷あり 私の駆け出し師長時代:CASE2②
昭和医科大学藤が丘病院/昭和医科大学藤が丘リハビリテーション病院・佐々木仁美

2025年8月に刊行した書籍『任命!看護師長』の連動企画。第一線でご活躍の方々に「駆け出し師長時代」を振り返っていただくリレー連載です。
ご自身でライフラインチャートに示しながら、“山あり谷あり”のエピソードをご紹介いただきます。

【衝撃】
念願の師長として、かつて8年間勤務した循環器センターに再赴任しました。
離職率は21〜28%と院内でも高く、時短やパート勤務など多様な働き方が導入され、看護師の8.6%を占めていました。
スタッフの疲弊や業務効率の低下、職場にただよう緊張感が課題であり、看護部長からも「離職率を減らすように」とのミッションを受け、職場環境の改善と働き方の見直しに取り組みました。
【やっとプラマイゼロに】
師長1年目は、スタッフの声を反映した業務改善と分担の見直しを実行し、職場の風土がフラットになりました。
私自身の目標は「やりがいのある職場づくり」であり、「業務効率を損なう要因の明確化」と「対話による認識の変化」を重視しました。
看護師のワークライフバランスを基本的権利と捉え、現場に入りながら対話を重ね、課題の抽出に努めました。
【安定期】
時短勤務者には業務範囲の拡大を図り、患者担当業務や清潔ケア、入退院対応、心臓カテーテル検査・治療、手術出し・迎え、ICU転棟などを段階的に指導しました。
1年間の継続的な取り組みにより協働意識が高まり、離職率は10%未満に改善。
師長2年目は、良い風土の定着を目指し、スタッフと共に業務に取り組み、ラダー2の育成を公言。
山本五十六の「やってみせて、言って聞かせて……」を実行しました。
【ヒヤヒヤ期】
師長3年目。ラダー3のスタッフが結婚ラッシュで退職し、看護実践能力が一時低下する危機! 
ラダー2を育成したので、ふんばれるか?という瀬戸際でした。
【拡大期/充実期】
師長4年目。係長とラダー2スタッフへの教育を重視し、スタッフと共に業務を行う日々。
「即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」。
スティーブ・ジョブズの名言を胸に、部署のOJT計画を基に人材育成に力を入れ、自分自身と係長がモデル役割を発揮しました。
認定看護管理者認定審査にも合格(ヤッター!)。
師長5年目は、師長としての実感を胸に、部署の看護の質向上をさらに目指しました。
【メッセージ】
看護師一人ひとりの勤務形態や実践能力に応じた業務分担、人材育成、業務改善は、働きやすい職場環境づくりに欠かせないと考えています。
師長自身が「やるぞ!」という強い信念を持ち、その思いを丁寧に伝えながら部署運営を進める姿勢も、組織変革には重要です。
小さな進歩が、やがて大きな一歩につながります。
信頼と対話を大切に、一歩ずつ前へ進んでください。
そして上長である看護部長・副部長の皆さまには、新米師長さんの奮闘を信じて見守ってあげてほしいと思います。
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佐々木仁美(ささき・ひとみ)
昭和医科大学藤が丘病院/昭和医科大学藤が丘リハビリテーション病院 看護部次長
昭和大学大学院保健医療学研究科博士前期課程修了。昭和大学横浜市北部病院看護次長、小田原市立病院看護部長を経て2024年より現職。医系基礎・専門・教育分野の医療マネジメント学領域で講師も務める。
師長1年目、職場の“火消し”に忙殺される(山あり谷あり 私の駆け出し師長時代:CASE①)
「任命! 看護師長:実務にすぐ役立つ知識・スキル・マネジメント思考」(立ち読み)
 
								






