朝 起きて仕事に出かける瞬間、どんな気分で家の扉を開けますか? 始まろうとする新しい 1 日に希望を描いて、軽快に? それともちょっと重い腰を上げて、心にスイッチを入れて扉を開く? 人生の大半の時間を過ごす職場生活、できれば楽しく充実した時間を過ごしたいものです。
私はファシリテーターという仕事をしています。話し合いの進行役やチームビルディング、組織づくりの支援などをしながら、中小企業やベンチャー、上場企業、規模・業態問わずさまざまな組織と出会う仕事です。10 年ぐらいこの仕事をしていたある日、ふと「人類は組織のつくり方を間違ったのでは?」と思うようになりました。
その頃、ある記事に出会いました。「組織を再発明しよう」という意味の英語でフレデリック・ラルーが著書で紹介した『Reinventing Organizations(邦題 : ティール組織)』に関する記事でした。自分の中に稲妻が走りました。同じようなことを考えている人が海外にいること。もうすでに人が輝いて働く常識破りのユニークな組織が世界中にたくさん生まれているという事実。そこにある考察は深く、やさしく、とても美しいものでした。
フレデリック・ラルーはマッキンゼーという世界最高峰のコンサルティングファームで活躍していたコンサルタントでありながら、「お金を持っている人たちがさらにお金を稼ぐことに、自分の大切な時間は使いたくない」と独立したベルギー人です。働く人が人間らしく誇りを持って働ける組織を探求し、本を執筆しました。今はイサカ・ビレッジというアメリカのエコビレッジで家族とともに暮らしています。
『ティール組織』は 600 ページ近くある骨太の組織論の本です。同時に涙を流しながら読む人もいるような稀有な本でもあります。彼は本の中で「人生は本当の自分の姿と出会う旅」と表現しました。職場はそんな旅路の主要な舞台なのです。このエッセイは今回を含めて 3 回、計 3 ページ。皆さんと出会うこの小さなご縁の扉で、皆さんの人生が少し輝き、働く日々に彩りが生まれることを願って、筆を進めていこうと思います。
嘉村賢州(かむら・けんしゅう)
東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授。場とつながりラボ home’s vi 代表理事。兵庫県明石市生まれ。京都大学農学部卒業後、IT 企業営業職、ベンチャー企業経営者を経て現在に至る。「ティール組織(英治出版)」解説者。
▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2022月4号 https://store.medica.co.jp/item/130212204
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