イマドキの若者解体新書:
新人を看護にコミットさせるワザ_第10回
【架空事例】
自分のライフスタイルを優先するAさん
Aさんはマラソンが趣味で、県外のマラソン大会へも可能な限り出場しています。
仕事が終わったあとに時間があれば、毎日でも走っていると話していました。
走っている間は、何も考えず頭が空っぽになるのがいいのだそうです。
マラソン大会へ出場したあとは、とてもいい笑顔で出勤しています。
明るい性格のAさんは、病棟ではムードメーカーです。
体力もあり、周囲への気配りもできるため、来年度の人事でAさんに主任になってもらおうと思っています。
人事の時期になったので面談したのですが、マラソンを制限されるのは嫌だからと、主任への昇進を断ってきました。
せっかくのチャンスなのに、なぜ昇進より趣味を選ぶのでしょうか。
ワンポイント解説
ゆとり・さとり世代(20歳代半ばから30歳代)の一部には、キャリアアップよりも自分のライフスタイルを優先したいと考える人がいます。
ゆとり・さとり世代の特徴の一つに、「一歩引いた状態で現代社会に対峙している」ところがあり、これは組織より個人を大事にする思考につながっています。
一方で、指示されたことは素直にやろうと考えるのもこの世代の特徴のため、次年度の昇進は辞退したかもしれませんが、数年後には主任を引き受けてくれる可能性があります。
ゆとり・さとり世代とキャリアアップ
ゆとり・さとり世代は、あまり責任を取ることを好まない世代ではあるようです。
「がんばります」と言葉では言っても、がんばる気がなかったり、「わかりました」と答えてもわかっていなかったりと、基本的にその場をやり過ごす軽い感じでの受け答えで学生時代を過ごしてきた人もいるようです。
この習慣が社会人になっても少し残っている場合があります。
ゆとり・さとり世代にとって、主任という役職は看護管理者が思う以上にハードルが高く見えるのかもしれません。
このため、Aさんの現在は、仕事で発生するストレスをマラソンで発散することにより、うまくバランスを保っているため、新しいストレスで自分のペースを崩されるのが嫌なのかもしれません。
そう考えると、Aさんに対しては、面談で「今回の主任への昇進は見送りますが、次は引き受けてほしいと思っています。主任と趣味の両立に向け、今からできそうなことを考えてみてください」といった感じで、課題を提示しておくことは大事ではないかと思います。
多様性を意識したキャリアアップの推奨
Aさん以外にも、優秀にもかかわらず他者に指示を出すことが性格的に苦手で、どうしても主任にはなりたくないという人がいるかもしれません。
その場合は、苦手なことに挑戦させるより、得意な臨床の実践で病院に貢献してもらうことがよいと思います。
具体的には、「専門看護師」を目指してもらい、活躍してもらうことがこれに該当するかと思います。
近年はダイバーシティや多様性を大事にする時代になっています。
ゆとり・さとり世代の傾向も個性と考え、病院のこれまでの規定のキャリアアップの路線にとらわれず、いろいろなポジションでその人の個性が開花するよう、育成することを考えてはいかがでしょうか。
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【次回予定】第11回「SNS上のコメントを鵜呑みにしやすい若者たち」です。お楽しみに!
「ゆとり・さとり世代の合理的思考」(イマドキの若者解体新書:新人を看護にコミットさせるワザ_第9回)

谷原 弘之(たにはら・ひろゆき)
川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床心理学科 教授
公認心理師・臨床心理士。職場のメンタルヘルスサービスであるEAP(Employee Assistance Pro-gram:従業員支援プログラム)を実践し、病院・企業などを対象にメンタルヘルス研修、復職支援などを手掛ける。看護現場でのメンタルヘルス対策に関しても積極的に支援している。




