●新型コロナウイルスの分類が5月8日から「5類感染症」に
政府は5月8日から、新型コロナウイルスの感染症法での分類を「新型インフルエンザ等感染症」の分類から季節性インフルエンザと同等の「5類感染症」に変更しました。不確定要素がまだまだ多い中、5類に変更されると、私たち看護管理者にとっては新たな戦いが勃発するなという印象をもちました。
5類になると、コロナ罹患後の就業制限が短くなり、指定医療機関以外でも入院が可能となります。また、コロナに関する検査費用や入院費の一部が自己負担になるといった変化もあります。検査にお金が必要と聞いた途端、納得しない患者さんは検査を受けることを拒否し、地域へと帰っていきます。罹患者の数も定点報告となり、報告の手間は省けますが、数の把握は難しくなります。つまり、今まで以上に看護師としての感染管理への対応が求められてくるでしょう。
●感染力が変わるわけではない
ここで注意すべきことは、5類に変わったからといって、感染力が低くなったわけでも特効薬がすぐに手に入るわけでもないことです。私たち看護管理者は、コロナ発生から約3年間にわたり、発熱外来の設置やコロナ病床確保、病棟再編など、医療の前線に立ってめまぐるしく変わる対応に迫られてきました。現場では感染症患者に関わることへの不安や、家族の理解不足から、スタッフの離職や配置転換希望などもあり、看護管理者としても今まで以上にメンタル面への配慮や、人的資源管理に苦慮してきました。「人財」として誰が欠けても困るという状況下で、頭を悩ませた管理者も多いのではないでしょうか。
特に感染管理に関わる認定看護師やリンクナースはどれだけ忙しかったか、また辛い思いをしてきたか。矢面に立たされながらも医師や看護師の間に立って本当によくやってくれたと思います。やっと収束かと思いきや第7波、8波と幾度も試練の波を乗り越えてきました。特に感染管理認定看護師の活躍が、どれだけ病院や施設を救ってきたことか。彼、彼女らには、私はどんなに感謝してもしきれません。声を大にして「本当にありがとう」と伝えたいです。
●「自分の置かれた立場でできること」を最大限に発揮
5月以降、世間では、もうコロナは終息したかのようにマスクを外し、自由が戻りつつあるように見受けられますが、実はまだまだ陰で猛威を振るっています。新型コロナウイルスとの闘いはまだまだ継続すると言っても過言ではありません。看護管理者は、感染管理に携わる認定看護師やリンクナースが疲弊することなく、「自分の置かれた立場でできること」を最大限に発揮できるよう、組織や環境を整えていくことが求められています。
●これからの時代に求められる標準化と管理の定着
悪いことばかりではありません。コロナと共存していくことで「New standard」ができ、「コロナ禍だからこそできること」として様々な取り組みが行われています。たとえば、Zoom面会や荷物お預かり時にメッセージカードを添える、患者さんの状態変化をこまめに家族へ電話するなど、「多様なニーズ」に対応して看護を創造・提供することに取り組んでこられたのではないでしょうか。こうした新しい対応が「やって当たり前」になってきて、面会が緩和されても感染予防対策や感染拡大の防止やサーベイランスなど、「すり抜ける患者」に対しては今まで以上に標準化と管理の定着が求められていくでしょう。
●昨日より今日を!今日より明日を!
何かを変えようとするとき、決まって抵抗する勢力がいたり、今までと異なる提案に足を引っ張られることもあるかもしれません。しかし、これだけ大変な新型コロナに対応できたのですから、この経験をバネにしてポジティブに新たな挑戦をしていきましょう!
看護管理者は、何かを変えようとする気づきが大事です。「まぁいいか」「落ち着いたら、今度しよう」と放置するのではなく、常に「こんな職場にしていきたい」という夢を描きましょう。そして、スタッフにも「 夢を語ろう!」「みんなで夢を形にしよう!」と語り続ければ、いつか必ず形となって叶うはずです。何も気づかなければ何も変わりません。しっかり夢を語って、昨日より今日、今日より明日へと変化し続ける看護管理者であり続けましょう!
髙須 久美子
社会医療法人美杉会グループ
理事・特任総看護部長 兼 看護部教育部長
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▼出典元 メディカファン2023年7月 あなたへのエール ~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~ 分類がかわることで看護師の仕事はどう変わるか
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