第8次医療計画

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

2024年4月からスタートした第8次医療計画は、医療法に基づき、各都道府県が地域の医療インフラを整備するために策定する計画です。
2017年までは5年ごとに更新されていましたが、介護報酬と診療報酬の同時改定の時期を配慮して、2017年以降は6年に1度の更新となっています。
この計画は、地域の現状に応じて人口動態の変化、医療技術の進展、経済状況などを考慮し、必要な医療サービスの質と量を定め、その提供方法を計画します。
プロセスには、医療機関の配置、専門医療人材の育成、医療技術の導入、公衆衛生の向上などが含まれます。

地域の状況に合わせた対策

この計画には地域の現状に応じた対策が盛り込まれ、人口動態の変化、医療技術の進展、経済状況などを考慮したうえ、必要な医療サービスの質と量を定めています。
重点が置かれているのは、5疾病(がん、精神疾患、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)への対策と、6事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、感染症対策)と在宅医療の強化です。

在宅医療も推進の重要な柱の一つで、患者が医療施設のみならず自宅でも適切なケアを受けられる体制の整備も計画しています。
医療従事者の確保と医療の安全の確保も重要な項目です。
質の高い医療サービスを支えるため、教育と継続学習の機会を提供し、医療ミスの防止と緊急時の対応力を強化しています。
基準病床数の設定や医療提供施設の整備もこの計画には含まれており、アクセスしやすい位置に最新の医療技術を備えた施設を配置することが目標です。

地域医療構想の取り組みとして、統合的なサービス提供を目指し、その他医療を提供する体制の確保に必要な事項も詳細に計画されています。
施策の評価および見直しのプロセスを通じて、効果を定期的に評価し、必要に応じて計画を更新することで、医療体制の持続的な改善を図っています。

図 第8次医療計画について(文献1より引用)
看護管理者の着目ポイント

看護管理者にとって、この計画は現状の病床数だけでなく、医療従事者の確保に関する重要な情報も提供してくれます。
また、地域で今後求められる医療内容や新たに出てくる医療課題についても考慮され、具体的な目標数値が示されています。
このため、現状の確認から今後の教育方針や採用戦略、運用の方向性など、将来の計画を立てる際に非常に役立つ情報が含まれているため、自身の地域の計画の確認は大切です。

第6次医療計画から在宅医療分野が導入されたことに続き、最新の第8次医療計画では新興感染症対策が新たに加わりました。
新興感染症に対する取り組みでは、予防計画とは異なり、医療計画では医療機関単独ではなく、より広範な医療連携を視野に入れた計画が立案されています。
そのため将来的な緊急事態に備えるうえで、計画の内容を理解しておくことが非常に重要になります。
今後、有事の際の対応策を考えるときには、この計画を一読する価値があります。

へき地医療におけるオンライン診療

筆者が目を通した各都道府県の第8次医療計画の中で、とくに注目したのはへき地医療計画におけるオンライン診療の取り組みです。
各都道府県の計画では、オンライン診療が積極的に取り入れられ、受診者数などの明確な目標数値が設定されています。
2024年の診療報酬改定では、オンライン診療において医師と看護師が協働する新しい診療スタイル「D to P with N」が導入され、看護師等遠隔診療補助加算という新たな点数が設けられました。
これは、医師が物理的に現場にいない場所で看護師が重要な役割を担い、患者ケアを提供するという新しい働き方を推進していることを示しています。

今後、看護師の活躍の場が拡大し、とくにアクセスが困難なへき地での活躍が期待されます。
医療計画が具体的な施策と連携して進められることで、看護師の新たな活躍の方法が示されていると考えます。

引用・参考文献

1) 厚生労働省.第8 次医療計画について.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001106486.pdf(2024年5月14日閲覧)

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年7月号
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