2024年看護の日(国際看護師協会・講演より)

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

日本における中高生の看護職への関心の高まり

2024年の看護の日にあわせて行われた、国際看護師協会の講演で話題になった経済協力開発機構(OECD)の新たなレポート1)に注目が集まりました。
このレポートは2024年5月10日に公表され、とくに中高生の看護職への関心の変化に焦点を当てています。
OECD諸国の中で、日本の若者は看護職への関心が顕著に高まっていることがわかります()。
これは他国ではみられない現象で、多くの国ではCOVID-19パンデミックを経験したことによる厳しい労働環境や職業満足度の低下が影響し、看護職への関心も低下しています。
パンデミックの中で「ヘルスケアヒーロー」として賞賛され、感謝もされましたが、実際にはそれが看護職への関心の高まりにはつながらなかったようです。
しかし日本では、若年層の減少が進む中でも、看護職への関心が高まっているという逆の傾向がみられます。

図 OECD諸国の15歳年齢の看護職への関心/2018年と2022年の比較(文献1より引用)

2024年の看護の日は偶然にも母の日と重なりました。
それゆえ考えやすいのですが、一般的に、母の日や父の日は「母や父への感謝を伝える日」であり、母や父への関心を高める特別な活動は行われません。
看護の日も多くの国々では「看護師への感謝を伝える日」として位置づけられている一方で、日本では看護師が看護の日に通常業務以外に「中高生に看護職の素晴らしさを知ってもらうための活動」を行っています。
その活動により、この結果がみられたと考えられます。

看護の日のイベント

各国の看護協会では看護の日に看護師を表彰しており、日本の看護協会においても、「忘れられない看護エピソード」を通じて看護職の魅力を発信し、そのエピソードを持つ看護師を表彰しています。
それに加えて日本では、前述したように、各地域の看護協会や病院で「中高生に看護職の素晴らしさを知ってもらうための活動」が行われています。

日本の場合、看護の日は、新入職員が入って間もないゴールデンウィーク明けの忙しい時期にあたります。
業務負荷が大きい中でのイベントとなりますが、に示された結果からも、将来の人材採用以外の指標軸で、看護の魅力をしっかりと発信する活動の効果は、間接的ながらも確認できたのではないかと考えます。

男子中高生へのアプローチと今後の人材確保に向けて

このOECDのレポートでは、男性の看護職への関心が低いという問題にも注目しています。
男子中高生へのアプローチを強化する必要性が示されており、これは従来の活動の効果をさらに高めるためにも重要です。
看護職への関心を男女問わず高めるために、性別に基づく固定観念を打破し、看護職が多様な才能に開かれたフィールドであることをより積極的にアピールする取り組みが必要です。

また、海外の動きを意識すると自国だけで看護師を十分に確保できない場合に、国際的な人材採用が重要な対策として示唆されています。
各国で看護師の募集が強化されると、語学の障壁を感じない優秀な若手が海外に流出するという傾向は、看護界でも今後さらに加速すると考えられます。
そのため看護師の職業満足度や労働環境についても、このOECDのレポートでは詳細に触れています。
COVID-19パンデミックによって看護師の労働環境の厳しさが再び注目され、職場でのストレスやバーンアウトが顕著になった今、看護師の職業からの離脱が懸念されており、それゆえ看護師がより働きやすい環境を整えることが急務とされています。

* * *

看護職への関心を高め、職場満足度を向上させることは世界的にも非常に重要であり、離職率の低下や職場環境の改善に向けた取り組みへの注力が求められています。
この流れを受けて、今後の看護の日の活動も多様な変化が期待され、新たな取り組みを模索する余地が広がっていると考えられます。

引用・参考文献

1) OECD. Fewer young people want to become nurses in half of OECD countries (May 2024). https://www.oecd.org/health/workforce.html(2024年5月10日閲覧)
2) ICN-International Council of Nurses. IND 2024 webinar recording EN. https://www.youtube.com/watch?v=wclRTEqIiPI(2024年5月10日閲覧)

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年8月号
Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
Scroll to Top