看護問題対策議員連盟の議論から看護の未来を考える

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

「看護問題対策議員連盟」が5年ぶりに開催

新型コロナウイルス感染症の影響で開催が中断していた自民党の看護問題対策議員連盟(以下、看議連)が、2024年6月20日、5年ぶりに開催されました。

出席者は国会議員102名、秘書による代理出席76名の計178名でした。
自民党の国会議員が現在372名であることから、約半数の国会議員が看護の現状に問題意識を持って参加したといえます。
参考までに国会議員総数は衆議院465名、参議院248名の計713名です。

今回は、看議連での議論の内容から、看護の未来を予測していこうと思います。

看議連に関して少し解説を加えると、看議連は、看護師からの陳情や請願を受け、法律制定前の段階で討論する場です。
ここでの討論後、法案協議と作成が行われ、法律案が国会の議長に提出されます。
その後、常任委員会、衆議院本会議、参議院本会議を経て法律が成立します(1)

図 国会に法案が出されるまでの流れ(文献1:p26—27を参考に作成)

5年ぶりの開催に伴い、看議連の役員が以下のように改選されました。

・会長:加藤勝信氏(衆議院議員)
・会長代行:田村憲久氏(衆議院議員)
・ 副会長:あべ俊子氏(衆議院議員)、尾身朝子氏(衆議院議員)、髙階恵美子氏(衆議院議員)
・幹事長:石田昌宏氏(参議院議員)
・事務局長:友納理緒氏(参議院議員)

上記役員のうち、看護師免許を保持しているのは、あべ氏、髙階氏、石田氏、友納氏の4名です。

日本看護連盟と日本看護協会からの提案

本連載の前回(第9回/2024年9月号)で取り上げましたが、日本看護協会が厚生労働大臣へ提出した要望書の内容は以下の3点でした。

1.外来医療・看護の機能強化
2.看護DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
3. 看護現場の長時間労働是正及び労働者の健康確保

そして日本看護連盟から提案された重点政策は以下の8点です。

1.多様で柔軟な働き方の推進
2.看護職・看護補助者の処遇の改善
3.専門性発揮に資するタスク・シフト/シェア
4.業務効率化の推進
5.外来の看護機能の強化/看護DX
6.働き盛り世代の健康支援
7.看護小規模多機能型居宅介護の設置推進
8.特定行為研修制度の活用推進

一見すると、日本看護協会の要望内容を日本看護連盟がすべて包含しているようですが、実際には両者の要望には重要な違いがあります。
看護協会の要望書では、第1項目と第2項目が看護DXに関するものでした(詳細は本連載第9回参照)。

一方、日本看護連盟の要望では、看護DXは外来分野の一部分として言及されているのみで、内容的には似て非なるものとなっています。
しかし、これは互いの主張を打ち消し合っているわけではありません。
むしろDXが業務再構築であることを考慮すると、看護連盟の重点政策には工夫が見られます。

具体的には、DX化を実現するために、タスク・シフトや業務効率化などの要素を細分化して提案しています。
これにより各要望の実現の可能性を高めようとする戦略的な姿勢がうかがえます。
このように、両者のアプローチは異なりますが、それぞれが看護業界の発展と改善を目指して、独自の視点から要望を提示しているといえます。

国会議員からの意見・質問

なお、当日、国会議員からとくに意見や質問があげられたのは「NP(ナースプラクティショナー)の制度化」「特定行為制度の領域について」「ナースセンターの在り方」「看護職の処遇改善」でした。

これらの議題のうち、「ナースセンターの在り方」については、今回の日本看護連盟および日本看護協会の提案には含まれていませんでした。

このことから、看護界の発展の方向性に関して、より多様な視点が存在することが示唆されました。
国会議員からのこれらの意見や質問は、看護業界が直面する課題や将来の展望について、より広範な議論を促す可能性があります。
また、提案されていなかった項目にも注目が集まったことは、看護政策の立案において、さまざまな角度からの検討が必要であることを示しています。

引用・参考文献

1) 日本看護連盟.会員ハンドブック.https://kango-renmei.gr.jp/wp/ wp-content/themes/kangorenmei/pdf/handbook-201807-1.pdf(2024年8月31日閲覧)

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年11月号
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