看護管理サポート:メディカ出版

リアリティショックからの回復が遅れがちなタイプへの支援

イマドキの若者解体新書:
新人を看護にコミットさせるワザ_第4回

6月頃は新人看護職員にリアリティショックが起こりやすい時期とされており、注意が必要です。
入職後数ヵ月経ったこの時期、少し周囲が見えるようになった新人は、理想と現実とのギャップに悩み始める可能性があります。
しかし、うまく上司や先輩の支援を受けることができれば、職場に適応できるようになり、リアリティショックからも回復していきます。

筆者は、新人看護職員のリアリティショックに関し、6月頃だけでなく、入職後1年間を通じて落ち込みやすい時期と回復の実態を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施しました。
実施時期は2019年で、総合病院の「新人看護職員フォローアップ研修」に参加した入職後1年未満の看護師97名(男性6名、女性91名)のうち、欠損のあった4名を除いた93名(平均年齢22.7歳、有効回答率95.9%)を分析対象としました。

結果、6月頃にリアリティショックのピークがあることはこれまでの研究結果と同じでしたが、良質な回復の手がかりは夏の休暇でしっかりリフレッシュすることにあるように見えました。
つまり、しっかり回復できる時期がこれまでより少し遅れがちなこと、上司や先輩の支援といった人的支援だけでなく、イマドキは自分流のリフレッシュ手段を持ち、それが成功する必要があることがわかりました。

【20歳代・女性の例】

海外旅行でリフレッシュ

Aさんは学生時代から海外に一人で行くことが趣味でした。
さまざまな国の文化に触れるとワクワクし、元気が出るそうです。
入職後、仕事でうまくいかないことが多いAさんからは、「仕事で窒息しそう」という言葉もこぼれ、一時は退職の相談を受けたこともあります。

初めての夏休みにAさんから5日間の休暇申請があり、許可することにしました。
アジアを旅行してきたAさんは表情が明るくなり、「世界で活躍できる看護師になることにしました」と夢を話してくれました。

対応例(一例)

以前は新人看護職員が連続休暇を要求した場合でも、まず先輩の休暇を優先して新人にがまんさせることもあったと思います。
職場の運営上仕方ない面もありますが、イマドキの新人が仕事で“窒息しそうになっている”と見受けられる場合は、「今がリフレッシュの必要な時期」と判断し、休暇を与えることをおすすめします。
リフレッシュが成功すると、次のステージに向かう意欲が戻ってくる可能性があります。

引用・参考文献

1) 谷原弘之ほか.入職後1年未満の看護職員の落ち込みやすい時期と回復の実態.川崎医療福祉学会誌,30(1),265-70,2020.

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【次回予定】第5回「発達障害の特性への支援について~自閉症スペクトラム障害(ASD)傾向の場合~」です。お楽しみに!


「学生時代にコロナ禍を経験した新人看護職員の職場適応支援について」(イマドキの若者解体新書:新人を看護にコミットさせるワザ_第3回)

谷原 弘之(たにはら・ひろゆき)
川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床心理学科 教授

公認心理師・臨床心理士。職場のメンタルヘルスサービスであるEAP(Employee Assistance Pro-gram:従業員支援プログラム)を実践し、病院・企業などを対象にメンタルヘルス研修、復職支援などを手掛ける。看護現場でのメンタルヘルス対策に関しても積極的に支援している。

ナーシングビジネス2025年4月号
第1特集:
イマドキの若者解体新書 新人を看護にコミットさせるワザ
メディカ出版 2025年4月発行
2,200 円(税込)
ISBN: 978-4-8404-8695-8

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