壁を乗り越える力は「同志」がくれる
◇滝童内浩子(株式会社ケアコム 顧問)

●看護者への感謝の声
 2020年1月以来、刻々と変わりゆく社会環境の中で、医療の最前線で看護を担ってくださっている看護職と、看護管理者の皆さまには、心より感謝申し上げます。
 今年8月には一日あたりの新規感染者数が減少してきて、10月は5万人を切りました。しかし、また11月から増加に転じています。これから冬にかけ、新型コロナ「第8波」とインフルエンザの同時流行による病床ひっ迫も心配されます。
 これまでも、走りながら・まわりを見ながら・考えながら、第一線で難局を乗り越えられてこられた看護管理者の皆さまの心身の疲労はいかばかりでしょうか。さらに追い打ちがかかるのか……と思うにつけ、心が痛みます。
 看護者は、家族との面会もできない入院生活が続くことで孤独を感じる患者さんに対し、さまざまな工夫で一人ひとりのケアにあたってきました。在宅においても然りで、NHKの新型コロナ特設サイトで「訪問看護師は医療面の支援が基本だが、訪問介護サービスを取りやめられてしまったコロナに感染した認知症の独居高齢者への介護業務を、社会的に必要なこととして請け負った」という記事を見つけました。
 このように、強い使命感と責任感ある看護者に対し、国民一人ひとりが感謝の気持ちを抱き、その声は広がってきています。「自分が感染しないことが、医療に従事する方々に負荷をかけないこと、エールを送ることになる」という一般の方々が増えてきたのも事実です。これは取りも直さず、看護職の皆さまの汗と涙の努力によるものに他なりません。

●前に進むためのエネルギー
 現在、患者家族の立場にある私も感謝の気持ちで一杯ですが、看護管理者OBとして状況がわかるだけに、思いや言葉だけで讃えられてもその労苦には報えないこともわかります。正当な待遇で応えてもらうことは勿論ですが、たとえば自らも求めて一歩踏み出せば、心と体が軽くなり、前に進めるエネルギーが得られる機会があります。
 私が現役の看護管理者だった頃、公開口頭審理の参考人として呼ばれたことがありました。組織を背負っている重圧に加え、怖れと不安で一杯でした。そんな折、大学院の同期に、食事を共にしながら気持ちを聞いてもらいました。親しい友人に思いを吐き出せ、いつもの自分を肯定し背中を押してもらえたことで、自然体で当日に臨むことができ、良い結果につながったことがありました。この出来事を乗り越えたことで私の中で何かが変わり、その力をくれた友人のことは生涯忘れないでしょう。

●ITを活用した対話の場
 今はコロナの影響や、それでなくとも多忙を極める看護管理者には、気軽に人に会い対面で話を聞いてもらうことは難しい状況になりました。しかし、幸いにもコロナ禍でIT技術とその活用が飛躍的に発達し、Zoomなどのツールを用いて、自宅や職場にいながら、対面のように双方向の会話が容易にできるようになりました。これらをぜひ活用したいものです。
 看護管理者の皆さんは独りではありません。コロナに向き合い、志を同じくする者同士が共通する悩みを抱えています。こうした看護管理者がつながり、悩みや思いを分かち合い、学びながら支え合うことができる、そんな場も生まれています。
 私は常々、看護管理者にこそリフレッシュが必要だと思っています。「看護マインド」を持つ私たちは、心と体の癒しをその手で提供することができます。こうした感覚を、相互に体感できる機会を持てるといいなと夢見ています。
 人は壁にぶつかり、それを乗り越えたときに大きく成長します。乗り越えるためのエネルギーをオンライン交流会でチャージしませんか? きっと解決の糸口がつかめ、次の一歩が踏み出せます。そこでのつながりは人脈を得る機会にもなり、次のキャリアにも役立つことでしょう。

滝童内浩子

株式会社ケアコム
顧問

▼出典元 メディカファン2022年12月 あなたへのエール
~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~
壁を乗り越える力は「同志」がくれる
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