●コロナ禍で培ったマネジメントの「知」を残す
日本での新型コロナウイルス感染症の発生から約3年半が経過しました。今年の5月には感染症法上の位置づけが2類から5類へと移行し、看護管理者の方たちもその対応に追われていることと思います。大きな変化のうねりに対応していくことは非常にストレス負荷が高く大変ですが、それと同時にこれまでのコロナ禍で培ったマネジメントの「知」を残していくことが大切だと考えています。たとえば培った「知」の一つに、「助けてもらうという意思決定をどの段階でするか」ということがあります。どこまで自分たちで対応できて、どこから他人に助けてもらうのか。その基準を平時から決めておくのです。「自分たちだけで頑張らない」というメッセージを発信することも、看護管理者の大切な役割だとコロナ禍を通して感じています。
●「べき論」にとらわれない
ワクワクするマネジメントをしよう
そのような大きな変化を迎えた今年ですが、新年度からちょうど2カ月が経ちました。特に新たに看護管理者に任命された方にとっては、心身ともに疲れが見え始めるころではないでしょうか。「頑張らないでよい」とはいえ、頑張ってしまうのが看護管理者の性(さが)だと思います。
私は普段からさまざまな場面で看護管理者の皆さんから話を聞く機会がありますが、その中で、管理者に任命されて「自分なりに管理を楽しんでいる人」と「うまくいかずに思い悩んでいる人」がいることに気づきました。ナーシングビジネス2023年春季増刊『看護師長のためのベーシックスキルBOOK』では、そんな看護管理者である看護師長さんに向けて、師長としての心がまえや立ち居振る舞いなど「看護師長としての所作」をまとめました。
その中でも3章の座談会では、看護師長の将来ビジョンとして4名の看護師長・副看護師長さんに、師長になってよかったことや苦労していること、師長に求められると思われる能力などについて率直に語っていただきました。驚いたのは、4名とも「こうあるべき」という姿に縛られず、できなかったら人の力を借り、一度失敗してももう一度チャレンジし、自部署の状況を見ながら柔軟に看護管理をされていることでした。
マネジメントは“手法”ではありません。スタッフや管理者同士、多職種間で対話をし、人の意見を聞いたり自分の意見を伝えることで、自分のやるべきことや病棟運営の方向性が整理されていき、おのずと「師長力」が身についていくものだと思います。
看護師長の醍醐味は「チームで物事を成し遂げる」ことです。疲れたときには「頑張らない」「人の力を借りる」ことも大事です。新しい時代に向け、自分なりのマネジメントのかたちを見つけていってほしいと思います。
坂本 すが
東京医療保健大学
副学長・看護学科長・教授
▼出典元 メディカファン2023年6月 あなたへのエール ~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~ 新しい時代に向け、ワクワクするマネジメントをしよう!
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