“カスハラ”から守るべきは心身の安全と自尊心

全国に先駆け、2025 年4 月1 日、東京都では「カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。
これから他の道府県でも同様の指針が策定されることでしょう。
東京都のこの条例の中には、就業者の責務として「カスタマー・ハラスメントの防止に資する行動をとるよう努めなければならない」というものがあります。
これは、カスハラ防止につながる努力を従業員もする必要があるという意味です。
筆者自身は、患者からの一度の暴言ですぐにカスハラ扱いをしてしまうのは現実的ではないと考えます。ただ釘を刺す必要はあります。

たとえば、「あのバカ看護師!」などの暴言を吐く人には、「私どものスタッフに至らない対応があったようではございますが、そのような表現はお控えください」と言う必要があります。
仮に「バカにバカと言って何が悪い!」と言われても、「そのような表現が続くようでしたら、これ以上のお話がかないません。ご協力ください」と毅然とした態度が必要です。
ちなみに毅然とした態度とは、「意志が強い」「動揺しない態度」のことです。「冷たい」「失礼」とならないように言い方にも気をつけたいです。

カスハラはもちろんのこと、クレームを受けた部下にはフォローが必要です。
まずは声かけです。できる限りすぐに休憩を促してください。
長時間の休憩が難しいときも、気持ちが落ち着くまで、せめて10 分ぐらいは業務から外してほしいところです。
そして時間が許せば、すぐに気持ちに共感を示しながら話を聴くようにしてください。
アドバイスや指導は部下が落ち着いてから行います。忙しい皆さんの仕事を増やすようで、筆者も心苦しく感じるときもありますが、これらの流れは大切な部下の離職を防ぐことにもつながります。
また日常からカスハラへの基本方針の明確化や相談窓口の設置、マニュアル・対応フローの作成、カスハラ対策に関する研修の実施を同時に進めていくことも必要です。カスハラから守るべきものはあなたと部下の心身の安全、そして自尊心です。知識とスキルを高めることで大切なものを守ってください。

田村綾子(たむら・あやこ)
株式会社オフィスティー&ティー代表取締役。国内・外資企業での人事教育業務、研修会社での事業部長を経て現職。キャリアコンサルタント、行動心理士、ストレスコーピングコーチなどの資格を有する。主な著書に『クレーム対応のプロが教える心を疲れさせない技術』(青春出版社)、メディア出演に「ドクターサロン」がある。

出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2025月9月号

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