会話で現場をつかむ:「知らない」「はじめて」「聞くしかない」から始まった

山あり谷あり 私の駆け出し師長時代:CASE⑤
地方独立行政法人 東京都立病院機構 都立広尾病院 副看護部長 天野久美子


2025年8月に刊行した書籍『任命!看護師長』の連動企画。第一線でご活躍の方々に「駆け出し師長時代」を振り返っていただくリレー連載です。
ご自身でライフラインチャートに示しながら、“山あり谷あり”のエピソードをご紹介いただきます。

【混乱期】

師長1年目、総合病院から障害者医療の病院へ異動しました。
未経験の領域で、スタッフに教えてもらいながら必死に学ぶ毎日でした。
障害者医療では、障害を持っていることがその人自身であり、その人がその人らしく社会で生きるための訓練や医療を提供するという新しい視点を知りました。
看護の世界が大きく広がった1年でした。
同時に、「自分の作りたい病棟とは何か」「自分にできることは何か」と悩み続けた時期でもありました。

【安定していたような期】

療育の楽しさを実感し、障害児・者との関わりを通して看護の深さを知りました。
どんな問題が起きても、スタッフと「一緒にやる」という意識で取り組むことで、業務改善や問題解決がスムーズに進んでいた時期です。

【続・安定していたような期】

療育病棟から医療病棟へ異動になりました。
看護の質向上に向けた取り組みをスタッフと共に進められる病棟になったと感じました。
また、看護データベースの一部デジタル化を進めるため、看護師長全員がチームとなって活動した1年でした。

【トラブル発生から解決】

障害者医療から総合病院へ異動し、外来と病棟看護の連携問題に直面しました。
ここでも職員との会話を重ね、多くの助言や解決策を得て問題を乗り越えることができました。
スタッフとの対話を通じて病棟が一丸となった1年でした。

また、DPCが初適応されることになり、職員教育に取り組みました。
看護師向けにDPCを啓蒙するポスターを作成し、全職員へと拡大採用されました。
この年、組織内の管理職試験にも合格しました。

【混乱期】

小児病院へ異動し、新病院開設準備担当の専任看護師長となりました。
総合病院での小児科看護の経験がない中で、何をすべきか模索する日々でした。
新病院の建築図面を見て配置を検討したり、目指す医療・看護、予算、自分にできることを毎日考え続け、悩み続けました

「理解を深めるには小児看護のベテラン職員と会話するしかない」と信じ、実行することで、少しずつ解決の糸口が見えてきました。
「会話すること」の大切さを強く実感した時期です。
また、管理職候補生として病院経営や看護管理について悩みながら学びを深めました。

【少し安定】

新病院の開設準備担当として、問題の焦点化や解決方法を他部門の職員と協力・連携しながら進めることができ、準備が順調に進み安定した1年でした。

【充実期】

副看護部長として関連総合病院へ派遣され異動しました。
多職種で退院支援に関する電子カルテ入力テンプレートの作成に取り組み、その成果は学会でも発表しました。
職員への説明方法やコミュニケーションの取り方をつかみ、一歩前進したと感じた時期です。
職員との会話を通じて、新病院が目指す看護の姿が見えてきました。

【メッセージ】

どんなときもスタッフとの会話が大切です。
時に自分への批判もあるかもしれません。
しかし、それはあなたへのエールでもあります。
些細な会話も表情も大切にして、患者さんやご家族、職員の声に耳を傾けて、仲間と共に自分ができることに全力でトライしてください。

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天野久美子(あまの・くみこ)
地方独立行政法人 東京都立病院機構 都立広尾病院 副看護部長
1987年都立豊島病院に入職。1999年看護師長、2010年保健医療公社大久保病院副看護部長に就任。その後、駒込病院・多摩総合医療センターを経て2022年より現職。


後ろ向きな異動から、キャリアが拓けた(山あり谷あり 私の駆け出し師長時代:CASE④)
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B5判 184頁 2,860 円(税込)
ISBN: 978-4-8404-8844-0

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