BCPって何のことですか?そう聞かれたときには「Business Continuity Planの略ですよ」と答えるよりも、「業務継続計画」と文字に書いて説明したほうが伝わります。略語の使用は時に普及の阻害になっているようです。同じように「減災」の説明も、「災害による被害を減らす」という説明はあまり役に立ちません。何かを普及するときには内容も大切ですが、「伝わる」方法の選び方が大切です。
「医療施設の業務継続」を考えると、「被災時」も「平時」も「患者さんの命をその時・その場にいる人たちで守り続ける」ことに違いはありませんし、その際に必要になる技能も同じです。そうであれば、災害対応のために何か特別なことを取り入れるよりも、平時から淡々と備え続けるほうが合理的で効果的ではないでしょうか。
多くの実災害対応の記録を読んでいく中で、「被災」の姿とは「人手・モノ・情報」が不足する事態であると気づきました。そして、解決が簡単ではないこれら3つの不足への対処方法を事前に考えて備えていくことが、「災害による被害を減らす」ための具体的な行動だと理解しました。考え続けた結果、私のたどり着いた「減災」とは、「患者さんに看護を届ける看護師の被災時の仕事を減らす」ことです。
このためにすべきことは、(1)日々行う療養環境の整備〈整理・整頓・清掃の3S〉を災害への備えとしても行っていると考えること(2)「念のため・心配だから決めておこう」と考えてつくってしまった災害対策のルールを削除することの2つです。どちらも新しいことを覚えたり、購入したりする必要がなく、お財布にも優しい対策です。災害のために新しいことをしなければならないという思い込みを見直す機会を持ちましょう。
ただし、思い込みという認知バイアスを自分たちの力だけで外すことは大変です。そこで、心配と老婆心で膨れ上がった現在の災害対策を減らす「減」災(害)対策の支援を始めました。それが現在勤めている減災対策支援センターです。
中島 康(なかじま・やすし)
地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立広尾病院 減災対策支援センター 部長。
日本DMATインストラクター。アクション・カードや減災カレンダーなどの対応・教育ツールの開発・普及や訓練の企画運営評価など、主に公的機関・医療機関の減災・準備を支援中。
▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2023月2号 https://store.medica.co.jp/item/130212302
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