看護管理者たちが記録してきたこと
新型コロナウイルス・パンデミックが始まって1年以上が経過しました。この間、医療や福祉に携わっている多くの看護管理者は、これまでにない極めて過酷な状況で日々過ごしてこられたと思います。
現場にいる看護管理者や看護師がこの1年間を振り返った多くの記録を読みますと、切なく、悲しく、時には怒りにも似た感情で、胸が苦しくなる思いです。例えば、外注している業者が次々と撤退して、清掃や洗濯、警備などの業務を病院職員で担当せざるを得なくなったこと。防護服やマスク、消毒液など基本的な物品の不足。当初、見えないウイルスへの恐怖心で、方針決定や刻々と変化する状況への対策等に苦慮したこと、職員に感染者が出たことで病棟や外来閉鎖などを余儀なくされ、病院経営がさらに圧迫されたこと等々、看護管理者が直面した困難は枚挙にいとまがありません。
しかし、その後、職員のメンタルヘルスに対する支援体制を整えたことや、スタッフ間でひとことのポジティブ・メッセージを交換し合ったこと、また、誹謗中傷が多かった地域住民が病院職員に対して感謝や支援を示すように変化してきたこと、社会全体で病院職員を応援する動きが出てきたことなどで、看護管理者もスタッフと共に本来の姿を取り戻す様々な工夫をされてきました。例えば、表情の見えない防護服に笑顔の写真を張ってコミュニケーションをはかるようにしたとか、面会の工夫はもちろんのこと、感染者の看取りの時には直接面会できるように配慮したことなどです。
自らを愛おしみ、これまでの経験を活かす
体験記では、多くの看護管理者が「今後の看護師人生にとって有意義な経験だった」と振り返り、今後に備えるための様々な提言で締めくくっておりました。
人間も組織も回復する力、レジリエンスを持っていることを改めて教えられました。
これまでの厳しいコロナウイルスとの闘いのなかで、まず自分が感染しないことに気を配り、自分が患者にも、同僚にも、そして家族にも不利益を与えないようにするという姿勢が身についたと思います。自分を大切にする術もこれまで以上に体得してきたのではないでしょうか。
最近セルフ・コンパッションという言葉をよく耳にするようになりました。自分への思いやりや優しさという意味があるようです。自分を批判するのではなく、必死に頑張っている自分自身を思いやり、愛おしむことをまず優先してほしいと思います。そして、これまでの経験を次に活かすことができれば、多くの人たちに貴重な示唆を与えることができるのではないでしょうか。
コロナウイルスとの闘いはまだまだ続きそうです。看護管理者の皆様にはこれからも試練の日々があることでしょう。どうぞご自分への思いやりと優しさを忘れずに、困難の中にいる患者さんたちにもスタッフにも貢献できることに誇りをもって、この難局を乗り切ってくださいますように。
こころからの祈りをこめて!
石垣 靖子
北海道医療大学名誉教授
▼出典元 メディカファン2021年6月 あなたへのエール ~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~ 自分への思いやりや優しさを大事にして!
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