思いを吐きだして、自分たちも健康に!
◇大島 敏子(日本看護連盟会長)

看護連盟会長というお立場として、気を配られたことと思います。

 看護界の動きとしては、看護職員の声をまず集め、職員の確保、現場支援、国への要望、看護の政策と国民をつなぐということを焦点として動いてきました。相談対応や、情報提供、個人防護具の配布などを行っています。現場では職員が足りなくて、マスクなどの物資も足りなくて、本当に苦労されてきた実態があります。この状況に対し、日本看護連盟と日本看護協会は協力・役割分担をして、与党や国会議員、厚生労働省に対して要望書を出して認められるなど、ダイナミックな動きをしてきました。
 たとえば私の場合、5月に看護現場の窮状を自民党の二階俊博幹事長のところへお話しに行ったところ、そんなに現場が困っているならと、目の前で厚労省に電話して交渉され、驚くほどのスピードで、防護具の手配や、看護職への危険手当や慰労金について要請していただけました。政策というのはこのように動くのだなということを目の当たりにした経験です。
 危険手当は各都道府県からの要望が認められました。危険手当額は1日4,000円。自衛官の新型コロナウイルス感染症対応と同じ金額です(1日最大4,000円)。この手当については、そもそも看護師は感染症をみることを含む仕事だから、必要なのかとの意見もありました。ですが、未知の新型コロナ感染症患者をみる看護職たちが、必要な防護物資も足りないなかで働くからには、通常の仕事の延長線上のようであっても、そこに特別な要素が入ったことに対して報いる手当が必要と考えたのです。

現場で働く看護管理者・看護職が今できることは何でしょうか?

 『COVID-19と闘った所沢ロイヤル病院の戦士たちの記録』という冊子に、同院の看護部スタッフみなさんの気持ちがつづられていています。これを読んで、ナレッジ共有の必要性をとても感じました。クラスター発生のなかで働き続けた人だけでなく、さまざまな理由で働けなかった人、みんなが何かしら抱えている気持ちがあり、それを吐き出すことが大切だなと。その作業によって一度、荷物を降ろさせてあげてほしい。自分の感情に向き合う機会をもち、「それでもいいんだよ」ということを言ってあげることで、気持ちの整理ができ、疲れが取り除ければと思います。
 それがさらに今後の感染症への備え、たとえば病院全体のシミュレーション、物品の配置、情報伝達方法、リリーフのしかたなどに活きていくはずです。感染が起こっていない病院にも、これから業務のありかたを変えていく意思決定をし、働き方改革を行っていく参考になると思います。
 休みへの意識変革も必要です。これまでは少々無理をしてでも働くくらい、重い責任のある仕事として捉えてきたと思いますが、自身だけでなく職場を守るために、少しの体調不良だとしても早めに休みをとる、とりやすい職場にするという発想に変えてほしいですね。
 今、新型コロナウイルス感染症による日本の死亡率が低いのは現場が頑張っているからこそ。看護管理者のみなさんの大変さを考えると言葉もないのですが、管理者のみなさんにも、少しでもご自身の癒しの時間をとって、自分へのご褒美をしてほしいと思います。

先生ご自身の変化はありましたか?

 私は仕事で東京に通勤していたので、家族は心配していました。同居する息子夫婦は在宅勤務で、私だけが外出していたんです。なので、帰宅したときには消毒も徹底するようにしていましたね。
 また、免疫力を高めるように、バランスのよい食事に気を遣っています。家にいるときには、仕事をする息子夫婦にお昼を差し入れたり、これまではなかった楽しみができました。かぼちゃをたくさん食べて、ローストビーフとローストポークが上手になりましたよ。ただ食べ過ぎ、運動不足で、家族にちょっと影響も出てしまいましたが……。
 日本看護連盟では、Nursing Nowの事業の一環として、一般の方も参加できる「走っていいことしよう!医療従事者支援バーチャルラン」のイベントを12月に実施予定です。私たち自身の健康を考えながら、社会とつながっていけたらと考えています。私も、2kmにエントリーしますよ。走らず、歩きますけどね(笑)。

[聞き手]メディカ出版 臨床教育ソリューション部門 粟本 安津子

大島 敏子

日本看護連盟会長

▼出典元 メディカファン2020年11月 あなたへのエール
~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~
思いを吐きだして、自分たちも健康に!
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