私たちの看護は、世界共通
~看護師を続けてきたことに誇りと自信を!
◇陣田 泰子(陣田塾塾長)

春先以来のご活動を振り返って、ご自身で変わられたことなどあるでしょうか?

 春先から軒並み、講義がキャンセルになったり、ウェブでの講義に切り替わっていきました。ITには自信がなくて、あまり気乗りしなかったのですが、Zoomで講義をしてみたら「結構いけるじゃない!」と新たな発見でした。双方向コミュニケ―ションができるし、グループワークの話し声を聞くこともできる。受講者の満足度もリアルと変わらないんです。ウェブならではのコミュニケ―ションのノウハウも、だんだん身についてきました。
 ウェブとリアルの違いを認識する経験もありました。大学院生1人に対して私が講義する機会があったのですが、同席していた教員から、「リアルとウェブでは全く違って、やはりリアルがいいですね」と言われたのです。その教員によると、「予定外の広がり」のようなものがリアルの会話では起こっていたそうです。だからウェブではダメということではなくて、何を目的にするかで使い分けることかなと。こういった経験も含めて、私自身の認識の変化や発想の転換がありました。
 新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめたころは、家でよくテレビを見ていました。3月には「医療崩壊」という言葉が出てきましたが、そのときは医師が主で、ナースが出てこないことが気になりました。その後、日本集中治療医学会理事長の西田修先生がテレビでECMOの説明をされた際、医師だけでは動かせず、看護師や技師が必要だと話され、一般の方向けの情報番組などで、チーム医療やナースの存在が語られるようになりました。それまでに約3カ月かかったんです。

たしかに、コロナをきっかけに、世界的にナースへの感謝という言葉が聞かれるようになりましたね

 これまでも、専門職として誇りをもって仕事をしてきていたのに、それが外に見えにくかったのは、私たちが「見える化」してこなかったことも大きいと考えています。「見える化」のためには、自分たちが行っていることに「言葉をつける」ことが必要なんです。また、自分の仕事を「自信をもってできている」とはっきり言える方がいるかというと、専門職であるがゆえに「まだまだ」と思う方が多いようです。でも、ナースになる方は、ちょっと人の役に立てることが好きで、みずから大変な仕事を選んだ人たちで、大きなエネルギーと力を持っている。さらに、管理者になっているようなみなさんは、大変な仕事を辞めずに続けてきている。それだけでも素晴らしいし、誇りに思ってほしい。あとは、「私は看護の仕事のなかでこれをやってきた」と言えるものをもてば、自信をもてると思うんです。私はこれを「私の実践論」として、現場のみなさんに広める活動をしてきました。
 「このことはやってきた」という何か、それを言葉にして、職場の中でちょっと話してみたり、1、2分でも、スタッフと「今日こんなことがあった」と話し合うことをお勧めします。そうすると「知の相互作用」が起こって、無意識にやっていることが意識され、「良い看護をしたい」という感度も上がっていきます。スタッフにも強いストレスがかかっている今、こういったちょっとしたしかけを作る、現場での小さくてもよいからちょっとした発見を共有する機会を作るのはリーダー層の仕事と思います。
 OECD(経済協力開発機構)では、この先の不確定な未来に対して、Educationプロジェクトを進めています。そのなかでキーコンピテンシーの3つのカテゴリーとして、1)社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力、2)多様な社会グループにおける人間関係の形成能力、3)自律的に行動する能力、を掲げています。これらの核となるのは、内省力(リフレクション)と、自ら工夫・創造する力だそうです。これって、全て看護に一致しますよね。看護の知は世界共通のもの。そのことに自信をもち、その専門職集団であるスタッフたちの秘めた力を信じて、自分だけが引っ張っていかなくちゃなんて思わず、静かなるリーダーシップでいかれればと思います。

[聞き手]メディカ出版 臨床教育ソリューション部門 粟本 安津子

陣田 泰子

聖マリアンナ医科大学客員教授
淑徳大学客員教授
陣田塾塾長(看護現場学サポーター)

▼出典元 メディカファン2020年12月 あなたへのエール
~看護管理者として新型コロナウイルスとどう向き合うか~
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