第2回 子育て中の看護師のワークライフバランス(スタッフへのキャリア支援)

子育て中の看護師のワークライフバランス

筆者が行うキャリアデザイン研修では、子育てと仕事の両立についての質問も多数寄せられます。
最近は「働き方改革」で、時短勤務や急な休み、親として出席したい子どものイベントなどにも配慮された職場環境が整備されてきました。日本看護協会が進める「ヘルシーワークプレイス」も、子育て中の看護師にとって、ありがたい状況なのだと思います。

一方、キャリアは環境のことだけに左右されるわけではないため、当事者である看護師が時間を区切って複数の役割を果たす状況に対して、どのように感じているのかということが重要になります。
環境整備が十分でないと、「自分がこんなに苦しい思いをするのは、周囲の整備が不十分だからだ」と感じる看護師は多いように思います。しかし、環境整備が十分になされたときに看護師が直面するのは、母親としての自分と看護師としての自分という、2つの顔でどのように生きるのかという課題です。

時間を区切っているからといって、簡単に気持ちが切り替えられるわけではありません。
「看護師として成長のプロセスにあり、学びたい自分もいる。しかし、子どもの母親は自分しかいない」。キャリアコンサルタントである私は、そんな話を聞くと、これがライフキャリアのサバイバルであり、人生の学びなのだと、しみじみと思うのです。

ついつい「人生いろいろとあるのだから、どこに軸足を置くのかを考えて。母親として今しかできないこともある。仕事は後でもできる」とか、「割り切ったほうが楽になるから」などと言いたくなります。
このように、人生の先輩としてのアドバイスはできるかもしれませんが、ギリギリの状況で必死に仕事と子育てをしている看護師は、こうした言葉を聞いた途端に「自分はどうしたいのか」「自分らしくバランスをとる方法はあるのか」という思考が止まってしまう可能性があります。

もちろん、うつになるほど苦しんでいる場合は、その悩みの解消を考える必要があります。しかし、「子どもを育てること」と「仕事をすること」がその人にとって経験(学び)になっていること、まさにライフイベントの変化によって生じる発達危機の真っただ中にいることに気づければ、何か違う言葉でその看護師のキャリアを支援できる可能性もあります。

次回:2年目看護師のキャリア課題


第1回 中途採用者の定着支援(スタッフへのキャリア支援)

濱田安岐子(はまだ・あきこ)
NPO 法人看護職キャリアサポート 代表/株式会社はたらく幸せ研究所 代表取締役

約10年間、中規模病院の看護師として勤務。看護専門学校専任教員、医療系人材派遣会社などを経て、2006年から独立し、看護職のキャリア支援を始める。2010年NPO法人看護職キャリアサポートを設立。個人へのキャリアカウンセリングのほか、セミナー講師、コンサルテーションなどを行う。

▼看護部の「人と経営」を学び、考えるオンラインサロン「看護トップリーダーサロン」

*講義動画「看護管理者がスタッフ入職時に伝えたいキャリア形成の考え方」はこちら
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