イマドキの若者解体新書:
新人を看護にコミットさせるワザ_第9回
【架空事例】
中堅なのに物足りなさを感じるAさん
病院の中でも中堅である、ゆとり・さとり世代のAさん。
素直な性格で仕事の指示をすると、すぐに「わかりました」と言って、何でも嫌がらずにやってくれます。
先日は廊下が濡れていたため、すべらないように拭いてもらいました。
ただ、終了の報告はありませんでした。
別の日には、看護のレポートを書くよう指示をしたのですが、「がんばります」と言ったきり、提出がありません。
そろそろ中堅なので、自分で考えて行動できるようになってほしいのですが、何か物足りなさを感じてしまいます。
ワンポイント解説
諸説ありますが、ゆとり・さとり世代は、20歳代半ば~30歳代といわれています。
この世代は、「わかりました」と答えてもわかっていなかったり、「がんばります」と言ってもあまりがんばる気がない人がいるのが特徴のようです。
なぜそのような発言になるのでしょうか。
この世代は、合理的思考を持っているため、あまり深く考えることをせず、わかっていなくても「わかりました」と言うことに決めていたり、とりあえず、「がんばります」と言ってその場をやり過ごすことにしているようです。
一方で、指示されたことは嫌がらずにやるという良い面があります。
ただ、やり終わったあとの報告は面倒と思うらしく、やりっ放しになることが多いかもしれません。
対応例(OK例)
Aさんは、いつも悪気なく行動しているようです。
このため、無意識に「わかりました」と答えていると思ったときには、「何がわかったか教えてください」と、問いかけてみましょう。
また、無意識に「がんばります」と言っているように見えたときは「あなたは何をどうがんばろうと考えているのですか?」と、少し自分の発言を意識化する声かけをしてみてください。
そのような声かけにより、自分の言動に責任を持つ習慣を身につけられるよう指導していきましょう。
ゆとり・さとり世代とZ世代の消費活動の違いから責任感を検討
ゆとり・さとり世代は、コストパフォーマンスを大切にします。
例えば、インターネット通販で何か買おうとする際、評価の星の数や、レビューを参考に、十分比較検討した上で最良の商品を買おうとします。
欲しい物を熟考して購入することは慎重でいいのですが、逆に言えば、他者の価値観に便乗しているとも思われ、あまり自分の考えはないのかもしれません。
このような習慣が日常的だと、仕事で自分が責任を取る考えは育ちにくいところがあります。
一方、Z世代は、コストパフォーマンスではなく、タイムパフォーマンスを大事にします。
インターネット通販で商品を購入する際、星の数やレビューを比較する時間がもったいないと考え、直観やその商品のコンセプトに共感できるかといった、自分の考えで購入を決めています。
このため、自分が思ったものと違っていても自己責任と考えるようです。
こちらのほうが、仕事の責任感は育ちやすいかもしれません。
全員に当てはまるわけではありませんが、世代ごとの特徴も考慮した上で、その人が成長できるポイントを見つけ、伸ばしてあげることが、未来の役職者を誕生させる契機になると考えます。
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【次回予定】第10回「役職になりたがらないゆとり・さとり世代」です。お楽しみに!
「Z世代のプライドと承認欲求」(イマドキの若者解体新書:新人を看護にコミットさせるワザ_第8回)

谷原 弘之(たにはら・ひろゆき)
川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床心理学科 教授
公認心理師・臨床心理士。職場のメンタルヘルスサービスであるEAP(Employee Assistance Pro-gram:従業員支援プログラム)を実践し、病院・企業などを対象にメンタルヘルス研修、復職支援などを手掛ける。看護現場でのメンタルヘルス対策に関しても積極的に支援している。




