管理者が元気であることが
働きやすい環境をつくる

 2020 年から猛威を振るう新型コロナウイルスへの対応もすでに3 年目。私たちのいる医療現場では、予想もしていなかったことに戸惑い、かなりのエネルギーをつぎ込んできました。世界も一変し、さまざまな分野で悪循環の一途をたどっている今日です。そんな中、繰り返し襲ってくる波に対し奮闘している医療従事者親子についての新聞記事を見つけました。
 毎日コロナ対応で休みも取れないほど多忙という娘が、「受け持ち患者がコロナ感染と判明した。私も罹患しているかも」と母親に打ち明けました。その言葉に母親は「看護師を辞めて帰ってきてもいいよ」と言います。すると「私は看護師は辞めませんよ」と娘。それに対して母親が「バッグには洗面道具と下着の替えだけはいつも準備しておくといいね」とアドバイスするという内容の記事でした。それを読んで、娘のプロ意識と母親の言葉に感動しました。
 私は、今年2 月に沖縄県看護協会の支援に入り、クラスターが発生した特別養護老人ホームを担当しました。介護士を中心に運営しているこの職場で、数人の看護師と事務員も一体となり、必死に入所者100 人を守る姿が伝わってきました。スタッフ全員に「ここまでよく頑張ったね。大変だったね。入所者を守ってくれてありがとう」と声をかけ、皆で環境整備や口腔ケア、おむつ交換などの見直しを行い、マニュアルを作成しました。一番感動したのは入所者の人格を大切にし、認知症者にもいたわりの言葉をかけ、一人ひとりを大切にしている姿です。あとで職員に聞いたところ、私の声かけで沈んでいた気持ちが明るくなり、認めてもらえたことで前向きになったのだそうです。介護の現場を知らない私のほうが「大きな宝物を得た」という気分になりました。
 私は常に「元気な第一声は雰囲気を変え、周りが元気になる道標になる」と信じ、「元気・笑顔・さわやかに」を意識して行動しています。すべての人(清掃・給食・洗濯場・事務など)に感謝の言葉を伝えることも忘れません。相手も「自分を認めてくれる人がいるので頑張る」と話してくれます。医療界は急性期、慢性期、介護の現場も含めて重要な役割を果たしているのです。苦境に立ったときこそ、明るく楽しく働きやすい職場づくりが管理者の肩にかかっているのです。

野中時代(のなか・じだい)
地方独立行政法人桑名市総合医療センター 顧問。看護師・助産師。
認定看護管理者。稲沢市民病院、常滑市民病院、名鉄病院にて看護
部長。桑名市総合医療センター理事長兼看護部長を経て現職。日本
福祉大学大学院福祉学研究科福祉マネジメント専攻修士課程修了。
滋慶医療科学大学大学院医療管理学研究科医療安全管理学専攻修士
課程修了。

▼出典元 Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)2022月8号
https://store.medica.co.jp/item/130212208
▼Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)トップページ
https://store.medica.co.jp/journal/21.html
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