「看護師等の確保を推進するための措置に関する基本的な指針」31年ぶりの改定

看護管理者は日々多くの業務に目配り・気配りが必要です。
国の施策や看護界を取り巻く状況、日々の働き方や組織づくりに関連した情報など、看護管理者が知っておきたい最新ニュースをご紹介します。

31年ぶりの改定

2023年10月26日、「看護師等の確保を推進するための措置に関する基本的な指針」が31年ぶりに改定されました。
この基本指針は、1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」がきっかけで、指針を定めることが義務づけられて作成されました。
改定のきっかけは、2023年2月の自民党看護問題小委員会における日本看護協会からの意見です。5月に医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師等確保基本指針検討部会」が開催、8月にはパブリックコメントが募集され、10月に改定に至りました。

看護師を取り巻く時代の変化

今回の改定内容を見る前に、時代の変化を少し確認しておきましょう(

●表 看護師を取り巻く時代の変化
※訪問看護は、1983年から退院患者向けで診療報酬が認められたが、ステーションとして独立していなかった。

1990年(看護婦時代)
2020年(看護師時代)
看護職数 83.4万人 173.4万人
男性看護職数 10,810人 104,365人
男性保健師数 0人 1,598人
人口 1.24億人 1.24億人
高齢者人口 1,493万人 3,612万人
出生数 122万人 84万835人
介護保険 なし あり
病院数 10,096病院 8,238病院
訪問看護ステーション数 0カ所 1,293カ所

改定の内容

全26 ページある中から、看護管理職として押さえておきたいところを3つだけ取り上げます。

(1)新たな看護師の確保の困難
看護学校入学者の大半を占める18歳人口が減少していく中で、新たな看護師の確保が困難であることが取り上げられています。

(2)看護職員の就労環境改善
新人看護師が貴重になるので、よりいっそう現役看護師が貴重になるため、就労環境改善に注力することが書かれています。
具体的には、就労継続を支援していくための労働時間の短縮や、業務負担の軽減が重要となることからICT化の積極的な推進、タスク・シフト/ シェアの推進などが挙げられています。
ほかにも、ハラスメント対策の適切な実施など職場環境の問題を解決するための仕組みが挙げられています。
人生100年時代においての生涯にわたる就業促進など定年退職という枠を越えた多様な働き方を示したり、復職支援に注力したりするように示しています。

(3)看護師教育の充実
医学・医療の高度化・専門家が進む中、就業場所、専門領域、役職等に応じた知識・技術・能力の向上や看護師のスキルアップの推進といった看護の専門化と教育が取り上げられました。
それだけではなく、看護の新たな活躍の場として、新興感染症や災害などへの対応の強化も取り上げています。

現役ナースが急減していく中で増大する看護ニーズの対応ということで、看護界全体であらためて看護師の働き方に関するイノベーションを起こしていかないといけないことがわかります。
急激に変化が起きているこの時代、変化しないことは、高速道路で止まるくらい危険だということを考えさせられる内容です。

引用・参考文献

1) 厚生労働省.看護師等の確保を推進するための措置に関する基本的な指針.https://www.mhlw.go.jp/content/001160932.pdf(2023年12 月11 日閲覧)

坪田康佑(つぼた・こうすけ)

慶應義塾大学看護医療学部卒。Canisius College(米国ニューヨーク州)卒/MBA 取得。無医地区に診療所や訪問看護ステーションを開業し、2019 年全事業売却。国家資格として看護師・保健師・国会議員政策担当秘書など、民間資格ではメディカルコーチ・M&A アドバイザーなどを持つ。
現在は国際医療福祉大学博士課程在籍、看護師図鑑(https://cango.blog/)を運営。

▼出典元:Nursing BUSINESS 2024年2月号
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