第3回 2年目看護師のキャリア課題(スタッフへのキャリア支援)

2年目看護師のキャリア課題

私が実施するキャリア関連の研修には、2年目看護師を対象とするものもあります。
また、メンバーシップ研修や初めてのリーダーシップ研修に2年目看護師が参加される場合もあります。
さらに、卒後2年目交流会にキャリア支援の立場で招かれて話すこともあります。
この交流会は、今後のキャリアを考えたり、同じ地域にある他組織の状況を知ることで、自組織の良さを実感する機会にもなっているようです。

こうした研修を通して2年目看護師たちの様子を見ていると、不安が強くなっている場合もあれば、早くも退職を考えている様子も見受けられます。
その一方で、2年目であっても看護のやりがいを感じて職場の先輩をモデルとして認識し、いかに実践能力を高めていくかを考えつつ、確実に歩み始めている方もいます。
それぞれに課題がありますが、さまざまな思いをもって看護師としてのキャリアを積み重ねている様子がわかります。

不安が強い2年目看護師に対して、教育担当者は「2年目になってからも、もっと手厚くフォローしておかなければ」と考えるようです。
しかし1年目のフォローだけでも疲弊感を募らせている先輩看護師たちにとっては、さらに負担が増すばかりであり、「問題の本質はもっと別のところにあるのではないか」と思ってしまう私です。

最近「心理的安全性」という言葉が、さかんに聞かれるようになりました。私も以前からこの言葉を認識しており、人材育成の研修ではGoogleの「プロジェクトアリストテレス」について情報提供しています。
プロジェクトアリストテレス」とは、Googleの企業向けリサーチの名称であり、生産性の高いチーム作りに必要な労働環境条件を明らかにしたプロジェクトです。リサーチによって突き止めた条件は、「心理的安全性」「信頼性」「構造と明瞭さ」「仕事の意味」「インパクト」の5つでした。

心理的安全性」は生産性の高いチーム作りの条件の一つであり、どのような行動をとっても「誰も自分を馬鹿にしない」という心の安全を意味しています。要するに、できない自分でもチームの一員であることを認められている感覚です。
だからといって、何もできないわけではありません。人には誰でも強みがあり、チームに貢献することができます。そのことをチームメンバーが理解しているということなのだと思います。

2年目看護師が不安を感じるのは、こうした感覚を学んでいないからかもしれません。それは現在身を置く環境の条件によるものばかりではなく、過去の人生においても「何もできない自分でも価値がある」という心理的に安全な場を体験したことがない可能性を意味します。
看護の現場に必要なのは、「2年目の不安が強い看護師」ではなく「心理的安全を体験したことのない人」を、いかにチームの一員にしていくかのプロセスなのかもしれません。

次回:看護職の職務特性とキャリア


第2回 子育て中の看護師のワークライフバランス

濱田安岐子(はまだ・あきこ)
NPO 法人看護職キャリアサポート 代表/株式会社はたらく幸せ研究所 代表取締役

約10年間、中規模病院の看護師として勤務。看護専門学校専任教員、医療系人材派遣会社などを経て、2006年から独立し、看護職のキャリア支援を始める。2010年NPO法人看護職キャリアサポートを設立。個人へのキャリアカウンセリングのほか、セミナー講師、コンサルテーションなどを行う。

▼看護部の「人と経営」を学び、考えるオンラインサロン「看護トップリーダーサロン」

*講義動画「看護管理者がスタッフ入職時に伝えたいキャリア形成の考え方」はこちら
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