第4回 単なる時短術ではないタイムマネジメントの基本(看護管理者のためのタイムマネジメント)
医師の働き方改革を進めるためには、医療機関全体でタイムマネジメントを行わなければなりません。そのためには医療機関全体で人間関係の改善がカギになるということをお伝えしてきました。
今回は、前回の内容を踏まえてタイムマネジメントの基本を解説していきます。
なぜ忙しさから抜け出せないのか
なぜ忙しさから抜け出せないのかという問いに、一言で答えるならば「後手に回ってしまっているから」です。
学生時代に、やるべきだとわかっていた宿題を、親に急かされることでやる気をなくしてしまった経験はないでしょうか。これこそ後手に回ったがゆえに効率を下げてしまう典型です。親に言われる前に手をつけていたら、どうなっていたでしょうか?
もしかしたら親からほめられて、ますます気分良く宿題がはかどったかもしれません。
これはあくまで一例ですが、やるべきことを誰か(あるいは締め切りや期限)に急かされてやるのと、先々の予定を考えながら自分の意思で先手を取ってやるのとでは、モチベーションも周りの評価も変わり、業務効率も大きく変化します。
また、後手に回ることで締め切りギリギリになると仕事の質が悪くなり、書類などでは修正や再提出が求められることもあるでしょう。
こうした時間のロスは、さらに次の仕事の時間を奪います。
誰しもこのような経験をしたことはあると思いますが、それでもなお、多くの人が後手に回ってしまうことで、急かされてプレッシャーを感じたり、やる気を削がれたりして効率低下を招いてしまっています。
くどいようですが、先々の予定を考えて先手を取って仕事に取りかかることこそ、忙しさから抜け出す唯一の方法なのです。
そのためには前回お伝えした優先順位のつけ方と合わせ、次の考え方も身につけていきましょう!
時間を管理することの目的と目標と手段
あなたは何のために時間を管理するのでしょう? 仕事を早く終わらせて定時で帰るためでしょうか。
ワークライフバランスが大切だと言われる昨今において、不要な残業をしないことはもちろん大切なことです。
しかし、それだけではなく、業務効率の向上と看護の質の向上という二律背反を追い求めることが最重要課題ではないでしょうか。
時間を管理することの目的は単なる時間短縮ではなく、最重要課題(業務効率と看護の質の向上)にきちんと取り組むことです。
そのために必要な時間はどの程度なのか(目標)を分析して、時間を捻出する手立てを考えるのです。
省略できる業務はないか、誰かに代わってもらえる業務はないか、IT活用などで短時間化できる業務はないかと、手段を検討していきましょう。
その際、すぐに実現できないようなアイデアであっても、非現実的なアイデアであっても構いません。
視野を狭めるよりはましですし、環境が整えば実行できるかもしれません。
これまでの常識にとらわれずに自由に発想して、できるだけたくさんアイデアを出してください。
職責ごとのタイムマネジメント戦略
タイムマネジメントと一口に言っても、実は職責ごとに優先すべき業務内容は異なります。
あなたはご自身の職責において、本来やるべき最重要業務を最優先できているでしょうか。
管理職はマネジメントの時間をしっかり確保しなければいけませんし、若手から中堅は現場の仕事(看護そのもの、患者や家族への対応など)が最優先です。
このように、本来請け負うべき業務の内容をきっちり全うするために、何を優先するべきかを徹底的に考えてみてください。
師長クラスの方から「現場のサポートに入ることが多く、管理業務はいつも時間外に行っています」といった声をよく聞きます。
しかし本来は、管理業務もしっかりと業務時間内に収めたいところです。
タイムマネジメントは全員一律に同じでいいわけではありません。
管理職は管理業務をはじめとした「考える仕事」を優先し、一般職の方はより多くの業務をこなせるように、効率を考えながら作業量を増やせるように取り組まなければいけません。
職責に応じた優先順位を考えていきましょう。
今回はタイムマネジメントの基本をご紹介しました。
次回は、管理者こそ時間的ゆとりが必要な理由を解説していきます。
医療機関全体、あるいは看護部の働き方改革の超重要テーマと言っても過言ではありません。楽しみにお待ちください。
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山本武史(やまもと・たけし)
ポテンシャルビジョン代表
看護部専門組織マネジメントコーチ
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクテイブ・コーチ(CPCC)
200床以上の病院看護部を専門に、人間関係を理由とした離職とメンタル不調による離脱を防ぐ専門家。看護管理者のマネジメント能力を高めて「やめたくない看護部」をつくり、心理的安全性とワーク・エンゲイジメントの向上をサポートしている。
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